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「ごちそうさまでした。」
タクシーに乗り込んだ岩田さんにペコッと頭を下げると「えっ!?」と大袈裟に驚かれた。
普段私がお礼を言わないみたいじゃん。
隣で隆二もクスッと笑った。
なんなのこの2人。
「じゃーね、岩田!」
「岩ちゃん、おやすみ。」
「うん!じゃーね!」
「あっ、岩田!行くんでしょ?」
「だから、行かないって!」
「なんでぇ。宮ちゃん待ってるのに?」
「今は付き合いたくないんだよ。もう俺のことはいいから。隆二さんのことだけ……考えてあげなよ。」
「そんなの岩田に言われなくても……」
「俺だってAちゃんに言われなくてもちゃんと考えてるから。ね?」
「A、岩ちゃん帰れないよ。」
「…………おやすみ。」
困った顔をしながら岩田さんは帰っていった。
岩田さんの思っている事なんて私には想像もつかなかった。
それは岩田さんに対してだけではなくて、隆二にも。
タクシーの中で隆二は無言で外を眺めてた。
どう声をかけていいのか分からなくて、私まで無言。
唯一話したのもたった一言、二言。
行き先を隆二は駅じゃなくマンションで運転手に伝えた。
「駅じゃないの?緑ちゃんあるんだけど。」
私のその言葉に、
「朝、送るから。」
たったそれだけ。
もう許してくれたと思ったのに……。
男の人は単純だなんて真っ赤なウソだ。
女の人よりも分かりづらくて、扱いが難しい。
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作者名:taka | 作成日時:2016年8月23日 18時