恋になるとき。６ (ページ24)

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ボーッと頬杖をつきながら窓を見てみると、そこに映ったのは般若……のような私の顔。

「…………怖っ。」

ホラーかと思ったわ。

自分の顔に恐怖を感じてパソコンに目線を戻すと待ちわびていた新着メールが届いていた。

メールのアイコンをクリックすれば＂遅くなってごめん！＂の一言とずらりと並ぶ真面目なコメント。

事務所に1人残って明日のモバイル更新の準備を済ませた。

「終わったぁー！」

ひとり寂しく両手を天井にかざし達成感を味わい、帰りの支度をして事務室を出た。

「Aちゃーん！」

エレベーターを待っていたら後ろから聞こえた私を呼ぶ声。

「あっ、いーわーたぁー！」

「俺のコメントちゃんと届いた？」

私に残業をさせた岩田さんが駆け寄ってきた。

＂超＂がつくほど爽やかな笑顔で。

憎いぞ、岩田。

「遅いよー！岩田のせいでまた残業だったんだからね？勘弁してよー。」

「ごめんって！お詫びに飯でも行かない？」

「なんで？」

「なんでって……今、俺お詫びにって言ったでしょ！？ニホンゴワカリマスカー？」

カタコトで小馬鹿にするような喋り方をする岩田さんの腕をバシンと平手打ち。

「いってぇー！」

腕を摩りながらジタバタする岩田さんを置いて、開いたエレベーターに乗り込んだ。

「岩田の奢りだからね！」

＂開＂ボタンを押して岩田さんを待つ。

「隆二さんも呼ぶ？」

隣に乗り込んできた岩田さんは不意に伸ばした手で階数ボタンを押した。

ふわっと甘い香りが鼻を掠めた。

「し、仕事だから……連絡だけし、しとく。」

「ん？噛みすぎじゃん？」

「顔、真っ赤だけど。」とのぞき込んできた岩田さんはニカッと笑った。

…………綺麗な顔。

２人だけの狭い空間に私の胸の音が響きそうなほど、鼓動が早まった。

私としたことが岩田にドキドキなんて………。

「着いた！岩田、着いたよ！」

胸の音も真っ赤な顔も誤魔化すように大袈裟に声を張らせた。

「そういう顔も出来るんじゃん。」

私の頬を人差し指でツンと突いて笑う岩田さん。

＂オトコ＂の匂いがした。