恋になるとき。６ (ページ13)

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「いちにぜろはち」

「早っ！もっとゆっくり言ってよ！」

光の速さで答えた私。

だって、だってさぁ………。

「いーち……にぃー……ぜーろ……はーち。」

「小っちゃ！普通に言えねぇのかよ！」

バスルームに笑い声を響かせる隆二。

そのまま、笑っててね。お願い。

「なんだっけ？１？」

「うん。」

「２？」

「そうです。」

「次は？」

「………０」

「で、８？」

「大正解です。」

「１２０８ね！覚えた！」

あら？イケちゃう！？

「あっ、でもこの番号は近いうちに変えようと思ってるから覚えなくてもいいよ？」

ねっ、早く忘れて！

「なんで変えるの？」

「なんで？」

「いや、俺が聞いてるんだけど！」

「なんだろう………気分的に？」

「どんな気分だよ！変えたりしたら忘れちゃうんじゃないの？」

「そ、そんなことは………」

「ねぇAちゃん、この番号なんなの？」

「な、なにが！？」

雲行きが怪しい。

「さっきからすげぇキョドってんじゃん！隠せてると思ってんの？」

「べ、別に隠してなんか………ね、ねぇし。」

余計なことを言うんじゃなかった……。

「１２０８でしょー？なんだろう……あー、めっちゃ気になるぅ。」

「だからぁ、なんでもないってば！もう暑いから私出るよ？」

「えー、絶対なんかあるでしょ！」

「しつこい男は嫌われるよ！じゃーね、お先！」

重い体を退かしてバスルームを出ても、隆二はぶつぶつ独り言を呟いてる。

なんであの数字にしたんだ私！

あの頃の自分に言ってあげたい。

＂いくら好きでも暗証番号にするのは辞めておけ＂と。