恋愛もよう。２ (ページ8)

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いつものカウンター席に座るとすぐに駆け寄ってきた大樹ちゃん。

「Aさーん！珍しいっすね、火曜なのに。」

「サプラーイズ。」

「あっ、あれっすか？バレンタイン的な。」

「的なって言うか、バレンタインだけど。」

若者の言葉についてけない。

そして若者の大樹ちゃんはもちろん、若くはない隆二までもが気付いてくれない私のウケ狙い。

＂サプラーイズ。＂って知らないの？

いつだか流行ったマジシャンの決めゼリフなのに。

なんだこの空振り感。

つまんない、この２人。

「Aさん、」

「なーに、大樹ちゃん。」

カウンター越しでニコニコ笑顔を振りまいてくる。

眩しい、可愛い笑顔を。

そして両手を私に差し出した。

「あー、はいはい。待ってるのね？」

＂うんうん！＂と首を縦に振る大樹ちゃんの手の上に買ってきた物を乗せた。

そこへ私のお酒を持ってやって来た隆二に、見せびらかすように箱を振る大樹ちゃん。

「Aさんから貰っちゃいましたー！」

と、満面の笑みを向ける。

ちらっと箱を見た隆二は私にグラスを差し出しながら大樹ちゃんに対抗する。

「どうせ義理だろ。」

「義理でもなんでも俺のことを考えて買ってくれたんっすよ？めっちゃ嬉しいじゃないですか！」

「お前なんでAに貰った時だけそんな喜んでんだよ。」

「いいじゃないっすかー。Aさん俺好きっすから！」

「あっそう、勝手にどうぞ。で、俺には？」

あっさり大樹ちゃんとの会話を打ち切って私にせがむ隆二。

「ありますとも。」

隆二には、本命だぞ。

大きめの箱を手渡すと＂サンキュ。＂と封を開け始めた。

隣では大樹ちゃんも早速封を開けて、２人して中身を見て黙り込んだ。

「可愛いでしょ？」

私がそう聞くと、

＂めっちゃ可愛いっす！＂って棒読みだけど一応喜んでくれた大樹ちゃん。

隆二は＂なんで俺までこれなんだよ。＂とかなり不満があるよう。

「隆二のは５種類も揃ってるんだよ？一番デカイんだから！」

アンパンマンチョコレートが。