恋愛もよう。２ (ページ13)

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「ねぇ、怒ってる？」

いつまでも脱がない剛典くんに痺れを切らしちょっと乱暴な手付きでネクタイを外した。

そしたら不安そうな顔で私を覗く。

「怒ってないから、早く脱いで。」

「Aさんが脱がして。」

「自分で出来るでしょ、子供じゃないんだから。」

「出来ない。Aさんに脱がしてほしいの、俺は。」

「もう。」

仕方なくYシャツのボタンを外していると肩をガッシリ掴んで少し屈んだ剛典くん。

「ねぇ、なんで泣いてるの？」

「…………泣いてない。」

「じゃあ、これなに？」

私の頬を拭う剛典くんの親指は、目から流れた涙で濡れていった。

イライラなんかしないで、素直に＂おめでとう。＂が言えたなら。

怒ったりなんかしないで、笑っていられたら。

剛典くんを喜ばせてあげられたのに。

大人げない自分に悔しくなって、涙が溢れ出た。

「………泣かないでよ。」

そっと腕の中に包んでくれる。

どれだけ酔っ払っていても、優しくしてくれる。

「…………誕生日、忘れちゃったの？」

「………ごめんね、Aさん。待っててくれたんだよね、俺のこと。」

「うん。」

「取引先の人達も来るって言うから、どうしても断れなくて。Aさんと過ごせるの楽しみにしてたんだけど。ごめん、まじで。」

「ううん。仕事に関わることだもん、剛典くんは悪くない。」

「ごめんね。」

「でも、あと10分くらいは誕生日だよ。ケーキ食べない？」

「食べる。Aさんと一緒に。」

剛典くんの腕の中は気分が落ち着く。

悲しくても悔しくても、その笑顔を見たら不思議と私も笑顔になれる。