恋になるとき。９ (ページ37)

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タクシーから降り立ったのは、私たちが通うサロン。

元カノ鴨志田さんが居る、サロンの前。

「隆二、何しに行くの？」

「いいから、おいで。」

扉を開けて私の背中をそっと押す隆二。

中では＂こんにちは。＂と鴨志田さんが微笑んで待っていた。

「Aさん、随分暗い顔してるけど、大丈夫？」

誰のせいだと思ってるんですか。

「だから連れて来たの。」

「もしかして、バレちゃったの？」

「あー！言うな言うな！もういいから！」

なに、その会話。

「隆二、バレたってなにが！？２人してなんなの？」

「また疑ってるでしょ、俺のこと。マジで鴨さんと何もないから。」

「ほんとに？」

「あのぉ…」

また同じ言い合いを始めた私と隆二の間に、鴨志田さんが遠慮がちに割って入ってきた。

「もしかして、私……何か勘違いさせちゃってますか？」

「勘違い？」

「何もないですよ、私と今市くん。」

隆くんが今市くんになってる。今はどうでもいいけど。

「隆二のこと……狙ってませんか？」

「「えっ！？」」

私の発言に驚いた２人は、同時に笑い出した。

笑い事じゃないのに。

「A、絶対ないからそれ。凄い妄想してたね、可愛いけど。」

「ほんと可愛い！けど、私……来月結婚するの！だから絶対それはないから安心してね？」

「結婚！？」

「私もAさんのように、大好きな人と結婚するの。ごめんなさいね、元カノが担当なんて、嫌だったでしょ？私も一度外れようかと思ったんだけど。続けてくれって、今市くんが。」

「……隆二。」

「お式の準備期間も一生に一度しかないでしょ？Aさんにとっていい思い出に残るように、いざこざは避けたいって。

それに、私にならわがまま言えるだろうからって。運命のドレスに出会えるまで付き合って欲しいってお願いされちゃったのよ？」

＂Aは俺がフォローするから、なんてカッコイイ事言っちゃってね～。＂と続ける鴨志田さん。

隆二は照れながら、私の腰に手を添えた。

「喋りすぎだよね、鴨さん。」と笑った。