恋になるとき。９ (ページ35)

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「いいよそんなの。部長にはトイレと仲良くしてましたって言えば平気だから。」

「緩い部署だな。てか女の子なのに恥ずかしくない？その言い訳。」

「じゃあ隆二に拉致られたってハッキリ言う。」

「それじゃ俺がダメな彼氏みたいじゃん。」

「ダメな彼氏でしょ！？元カノと昼間っからイチャついて！」

「もー、わかったから大声出すなよ。俺イチャついてないし。」

妙に冷静な隆二はエレベーターに私を押し込み、誰もいない給湯室に入った。

「コーヒー飲む？」

なんて、これまた穏やかな口調で聞くもんだから勢いづいていた私も失速。

「………いらない。」

「ん、じゃあとりあえず座って。」

椅子に座らさせて、目の前に隆二はしゃがみ込んだ。

俯く私を見上げて、両手を握る。

「A？人と話す時はどうするんだっけ？」

「目を見て話す。」

「じゃあ見ないと。」

仕方なく合わせた視線。

こんな時に上目遣いとか、卑怯だ。

その目に弱いんだから、私は。

「あのね、やましい事はしてないから俺。」

「じゃあなんで電話出てくれなかったの？」

「話してる最中に電話に出るとか失礼でしょ、相手に。それにかけ直そうと思ったら呼ばれたから、いまいちーって。心臓止まるかと思ったわ。」

私もショックで心臓止まるかと思ったわ。

「なんで一緒に居たの？」

「サロンに行ってたから。鴨さんも用事があって事務所通るって言うから、同じタクシーに乗っただけ。それだけだよ。」

「サロンに何しに行ったの？明後日一緒に行くのに。」

「うん………ちょっと、見たくて。」

「なにを？」

「タキ、タ、タキシード？」

もー、怪しすぎる。

「だからぁ、明後日見に行くんだから今日行く必要ないでしょ？本当は会いたかったとか……あの人に。」

「ねぇ、それマジで言ってんの？」

「………酷いよ、隆二。」

握った手を離して胸をポンと叩いたら、ギュッと握られた。

「酷いのはAの方だろ。勝手に妄想して怒ってさぁ。いい加減にしろよ、マジで。」

………ヤバい。