恋になるとき。９ (ページ22)

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いつも行く居酒屋に着いてタクシーを降りると、目の前にはガードレールに腕を組んで寄りかかる隆二が居た。

その姿を見て不覚にも、カッコイイなんて思った。

こんな時でもキュンとするんだ、私の心は。

「A、ちょっと。」

「んー、いい。」

「はぁ？いいじゃなくて。」

華麗にスルーするも、がっしり掴まれた手首。

まゆと宮ちゃんは＂先行ってるね。＂と変な気を遣って立ち去る。

「まゆちゃんごめん、後から行くから。」

隆二は勝手にそう言った。

私はもうお店に行きたいのに。

「早く行こうよ、お店。」

「その前に少し話そう。」

「なんの話？」

「なんのってさぁ……避けてんじゃん、俺のこと。」

「別に避けてないよ。」

と言いつつ背中を向け続ける私。

「ならこっち向いてよ。」

えー、ほんと無理。

微動打にしない私に溜め息をついた隆二は目の前まで来て目線を合わせるように腰を曲げた。

「俺の目、見て。」

あまりにも真剣な目で見てるもんだから、合わせた視線は一瞬で外れた。

動揺しまくり。

「ほらー、避けてんじゃん。」

「しつこいなぁ。」

「…………なんなの？」

げっ。キレた。

「もう行こうよ。ここ道端！見られたらどうすんの？」

「そんな事どうだっていいよ。」

「よくない！パパラッチされたらどうすんの？私のインスタ大炎上だよ！」

「お前やってねぇじゃん、インスタなんて。」

「そうだけど！もしもの話！」

「意味わかんない。」

「とにかく嫌なの、こんなとこで……こんな……ケンカみたいなの。」

「あー、もー。分かったよ、中行こう。」

やっと納得してくれた隆二は私の手を引きながら店内に入って、店員さんに空いてる個室は無いか聞いた。

そんな都合よく空いてるわけないじゃん、と思ったら難無く個室に通された。