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「お一人ですか?」
『ええ』
久しぶりに私は行きつけのバーのカウンターで飲んでいた。
その日は、私より少し年上の爽やかな男性が声をかけてきて、私達は2人で飲んだ。
名前は、藤川 俊。
彼は真面目そうなThe 好青年という見た目で、こんなバーに来るなんて少しイメージと違うような気もする。
しかし気が利くし話し上手。
酒も手伝い、私達はかなり打ち解けた。
連絡先まで交換して、その日私たちは別れたのだった。
それから、私達は予定が合えば度々バーで飲むようになった。
彼は本当に話し上手で、私と気が合った。
「Aさんは、いつも1人で来てますけど、彼氏さんとかいないんですか?」
『いないですよ…藤川さんは?』
「藤川じゃなくて俊って呼んでくださいって、言ってるのに…僕は最近振られちゃって」
少し拗ねた様子の彼に謝って、『俊さんならとても良い彼氏さんになりそうなのに…残念ですね』と言うと、彼はものすごく嬉しそうだった。
「本当ですか!?もう少し頑張ってみようかなあ」
『告白から始まる恋もあると思いますよ』
…なんて、ろくに恋愛したことない私がアドバイスをする。
私が暗い顔になったのに気づいたのだろう。
彼がごそごそとカバンをあさって、私にチケットを見せてきた。
「あの、良かったらこれ一緒に行ってくれませんか」
それは公開間近の映画のチケットだった。
『え?好きな子誘わなくていいんですか?』
反射的に私が聞くと、彼は少し照れたように笑った。
「実は誘おうと思ってるんですが…下見しておきたくて…」
うぶな彼が可愛く思えたのに加え、私の好みにばっちり合った映画だったため、私はそれを了承した。
実を言えば、私はまだ安室さんのことを完全に吹っ切れたわけではなかった。
ぼーっとする時間があると、彼の顔が思い浮かんでしまう。
笑顔、真剣な顔、色っぽい顔…
考えると胸が苦しくなって、泣きそうになってしまう。
だからこうして予定を入れて忙しくする事で余計なことを考える暇を作らないようにしていた。
彼は知らず知らずのうちに安室さんを忘れるために付き合わされているのだ。
ごめんなさい、俊さん。
私は心の中で彼に謝った。
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ピカチュウ - 面白いです!!安室が、目を覚まさないまま終わりは嫌です。だから、更新頑張ってください!!! (2020年9月15日 6時) (レス) id: 59772e939d (このIDを非表示/違反報告)
まな(プロフ) - 続き待ってます! (2020年8月20日 11時) (レス) id: b4debc2124 (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - 続きが気になるところで終わらせますね!?更新頑張ってください! (2020年6月5日 11時) (レス) id: da120451b3 (このIDを非表示/違反報告)
MONACA(プロフ) - 続きはないんですか??? (2020年4月13日 14時) (レス) id: 21fce29ea8 (このIDを非表示/違反報告)
空白@吹部@Tp@不定期浮上(プロフ) - こういうラストってありなんですか、、、!?(混乱) (2020年4月11日 7時) (レス) id: 16e27b9642 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2020年1月29日 14時