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「Aさん、今度の日曜日、
一日僕にくれませんか」
『…え?』
安室さんに言われた一言に、私は驚いて顔を上げた。
「実は、知人に博物館のチケットを貰ったんです」
いつもの安室スマイルで2枚のチケットを見せてきた安室さん。
博物館なんて、実際全く興味無い。
でも懐に入るちようどいい機会かもしれない。
そろそろもう少し距離を縮めようと考えていたところだし。
『いいですよ』
私は安室さんに負けじとにっこり笑った。
*
『おはようございます』
デート当日の朝、私は本格的なトラップを仕掛けるため服装選びやメイクに気をつかった。
安室さんは先に来ていて、私に気づいて顔を上げると嬉しそうに笑った。
…なんだか本当のカップルみたいだ。
「おはようございます、Aさん」
『遅れてすいません…』
「集合時間ぴったりじゃないですか」
『でも安室さんを待たせてしまったので…』
「僕が早く来すぎただけですよ」
楽しみにしていたので、とはにかむように笑う安室さんに、私は眉根を寄せた。
今までと態度が違いすぎる。
他の男なら私に落ちた事をちょろいと思うだろうが、彼がそんなにコロッと落ちるとは思えなかった。
「さ、行きましょうか」
いつもより声の弾んだ安室さんにエスコートされて、私達は博物館の中へ入った。
正直に言おう。私は博物館に全く興味がなかった。
しかし安室さんの巧みな解説込みだと、博物館も悪くなかった。
というか、安室さんは物凄く博識だと分かった。
何楽しんでるんだ。これは仕事。
ちゃんと自分にそう言い聞かせ、私は思っている3倍くらいは楽しそうに笑い、5倍くらい大袈裟にリアクションした。
混雑した順路を、さりげなく私を守りながら歩いてくれる安室さん。
「言い忘れてましたけど、綺麗ですよ、Aさん」
「…ありがとうございます」
「いつもお綺麗ですけどね」
「…ありがとうございます」
らしくない笑い方をする彼はどこかおかしい。
なんだか調子が狂う。
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椿 - えだまめさん» コメントありがとうございます!!多分どんどんグダグダになっちゃうと思うのですが、変わらず応援してくれたら幸いです! (2020年1月29日 12時) (レス) id: 55324010a1 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ - おもっしろい!夢主ちゃんと安室さんのすれ違いが凄くてもどかしい。でもそのムズムズ感も楽しいです!ストーリーもしっかりしてるけど、サクサク読める速さの流れなので毎回毎回が気になります。更新頑張ってください!応援しています! (2020年1月28日 17時) (レス) id: e05e54b6fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2020年1月16日 19時