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…なんで泣いてんだろ。
部屋着にパンプス、髪はボサボサ。そんな姿で外に出るなんて普段は考えられないが、今はそんなことも言ってられなかった。
色んな感情がぐちゃぐちゃになって、両目から溢れ出して止まることを知らない。
付き合ってもいない人とあんなことすべきじゃない。
でも私はなぜだか気持ち悪いとか、触らないで欲しいとか思わなくて、すぐには拒絶できなかった。
自分はいつからこんなふしだらな女になってしまったのだろう?
それに安室さんも安室さんだ。
彼はただハニートラップの対象である私に沢山キスして愛を囁く。
彼にとってあの行為は、大切で愛しい人とする行為じゃないんだろうか、誰とでも軽々しくできてしまうんだろうか。
涙がとめどなく溢れて、私は行くあてもなく歩いた。
道もわからないまま歩いて、歩き疲れて、私は道の端で座り込んだ。
「…こんばんは、お嬢さん」
何分たった頃だろうか、私が顔を腕に埋めて泣いていると、聞いた事がある声がした。
私が顔を上げると、彼は跪いて私の手をとる。
「泣いていたら、可愛らしいお顔が勿体ないですよ」
怪盗キッドだった。
『…泣きたい時だって、あるものでしょ』
こんな時でも私は強がりだ。
可愛げのない態度に自分で自分に嫌気がさす。
「そうですね…でもやっぱり、あなたには笑顔が似合う」
彼が優雅な動きでかぶっていたハットをとり、私の前に差し出した。
それと同時にポン、と色とりどりのの花束が出現する。
『わ、…すごい…』
「これはあなたへのプレゼントです」
帽子から花束を取り出すとキッドは私に手渡した。
きちんとラッピングされていた。
『なんで…ここに?』
「…泣いている女性をほっとくことはできませんから」
彼はそう言って微笑む。答えになっていなかったが、別にいいか、と流すことにした。
「…それにしても、こんなことろで一人でいると危ないですよ」
『……帰れないの、今ある人の家から飛び出してきたところだから。それに…』
私は鞄を漁った。やっぱり、ない。
『家の鍵をその人の家に置いてきちゃったみたいで、自分の家にも帰れない』
キッドはそれを聞いて何も思ったか、ニヤリと笑って恭しく頭を下げた。
「それでは、私とひと時の空の旅を楽しみませんか?」
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椿 - えだまめさん» コメントありがとうございます!!多分どんどんグダグダになっちゃうと思うのですが、変わらず応援してくれたら幸いです! (2020年1月29日 12時) (レス) id: 55324010a1 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ - おもっしろい!夢主ちゃんと安室さんのすれ違いが凄くてもどかしい。でもそのムズムズ感も楽しいです!ストーリーもしっかりしてるけど、サクサク読める速さの流れなので毎回毎回が気になります。更新頑張ってください!応援しています! (2020年1月28日 17時) (レス) id: e05e54b6fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2020年1月16日 19時