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いつもの場所へ行くと、既に彼女はカウンターに座って飲んでいた。
「遅れてすまない」
『大丈夫ですよ〜』
「…」
こいつ、いつからここにいるんだ。
もう酔ってる。
「何か話があったんじゃなかったのか?」
『ありますあります』
赤井さんに聞いて欲しいことがたーくさん!と手を広げるAに、俺は苦笑した。
俺も適当な酒を頼むと、Aはぽつりぽつりと話し出した。
安室透のこと。
ハニートラップをかけたが情報を引き出せなかったこと。
彼女がいたかと思ったが勘違いだったこと。
新たな彼の一面を見つけてしまったこと。
『私、なんかおかしいです、』
彼女はとろんとした目をして話し続ける。
『なんだか落ち着かなくて』
どうしたらいいと思います?と見つめてくる彼女に、俺は少し寂しいような、嬉しいような気持ちになる。
「…それは、いずれ分かる」
Aとはアメリカで共に時間を過ごした幼なじみのような存在だ。
俺はAを妹同然に思っている。
彼女はもともと人に心を開くことが苦手だった。
情報収集や潜入捜査をするようになってからだろうか、彼女が大人なフリをするようになったのは。
潜入捜査において相手を誘惑するため、大人の色香を匂わせる事は必要だ。
だが、彼女は仕事のみでなく、どんな時も大人の皮を被って自分を偽っている。
きっと怖いのだ。自分の本来の姿を見せることが。
そんなAは彼氏が出来たことがなかった。
潜入捜査でターゲットに近づき似たような関係を演じてもらったことはあるが、プライベートで色恋沙汰を聞いたことは無い。
彼女が本来の姿をさらけ出せる人。
そしてそんなAを支えてくれる人。
俺は、そんな存在ができたら、きっとAも少し変われるのではないかと密かなお節介を焼いていた。
そんな存在が今、彼女にはできつつある。
『でも私、ちょっと最近楽しいんですよ』
にやける彼女に、適当な相槌を打つ。
「…A、明日用事が無ければ出かけないか?」
『用事なんてないですよ〜。どこ行くんですか?』
「まだ内緒だ」
安室透。
俺は少々シスコンだぞ。
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椿 - えだまめさん» コメントありがとうございます!!多分どんどんグダグダになっちゃうと思うのですが、変わらず応援してくれたら幸いです! (2020年1月29日 12時) (レス) id: 55324010a1 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ - おもっしろい!夢主ちゃんと安室さんのすれ違いが凄くてもどかしい。でもそのムズムズ感も楽しいです!ストーリーもしっかりしてるけど、サクサク読める速さの流れなので毎回毎回が気になります。更新頑張ってください!応援しています! (2020年1月28日 17時) (レス) id: e05e54b6fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2020年1月16日 19時