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携帯にうつる、「安室透」という文字。
この前ポアロで、安室さんが私を心配していたらしく、連絡先を交換してしまったのだ。
嫌なわけでないけれど、どこか、落ち着かない。
そわそわして、その名前を何度も見てしまう。
自分の事なのに、自分の気持ちが分からない。
私は大学のレポート課題をしていた手を止めて、パソコンを閉じた。
そろそろ子供は家に帰る時間。
私はそんな夕暮れ時に身支度を始めた。
*
『何か、おすすめのカクテルお願いします』
Bar
このバーは赤井さんとの密会場所でもあるが、そもそも私のお気に入りでもあるのだ。
何かに行き詰まった時や悩んだ時はここに来て息抜きすることが多い。
それに、たまにバーにやってくる知らない人とも仲良くなれることがあるのだ。
不思議なことに、1度しか顔を合わせない相手の方が相談できるし、あっさりと解決策を教えてくれたりする。
「ハーイ、かわい子ちゃん」
知らない声に振り返ると、ブロンドの髪が目に入る。ベルモットだ。
「こんな所で1人?」
『…ええ、まあ』
「あら、じゃあ問題ないわね」
『…え?』と呟いたのもつかの間、彼女は断りもなく私の隣に座った。
「彼女と同じものを」
「かしこまりました」
彼女は適当に注文して、「それで?」と私に向き合った。
「何か悩み事?」
『別にそんなこと、ないわ』
「…ふーん?」
近くにいると、ベルモットの色気に当てられてしまいそうだ。女の私でもそうなのだから、安室さんなんてひとたまりもないだろうな、と余計なことを考える。
なんだか負けたくなくて、私も強気に答えた。
「この前、あなたを見つけたバーボン、とっても慌ててたわ」
『…そりゃあ、人が倒れていたら慌てるんじゃないかしら』
「そうかもしれないわね…でも、私の目は欺けない」
バーボンがあんなに焦ってるのは初めて見た、と楽しそうに言う彼女に、私は疑念の眼差しを向けた。
『…嫌じゃ、ないんですか』
「え?」
『…バーボンさんが、他の女性を気にしていて』
私だったらきっと面白くない。
それとも本命彼女の余裕というやつか。
そんな私を見て、何を悟ったのかベルモットはさらに楽しそうに笑った。
「私、バーボンの彼女でも何でもないわよ」
「それに…あなたそっちの方が可愛げあっていいわ」
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椿 - えだまめさん» コメントありがとうございます!!多分どんどんグダグダになっちゃうと思うのですが、変わらず応援してくれたら幸いです! (2020年1月29日 12時) (レス) id: 55324010a1 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ - おもっしろい!夢主ちゃんと安室さんのすれ違いが凄くてもどかしい。でもそのムズムズ感も楽しいです!ストーリーもしっかりしてるけど、サクサク読める速さの流れなので毎回毎回が気になります。更新頑張ってください!応援しています! (2020年1月28日 17時) (レス) id: e05e54b6fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2020年1月16日 19時