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ポアロ、行こうかな。
ポアロに行っていたのはほぼ安室さんに取り入るためだったので、もう行く必要が無い。
それに、安室さんにあまりベタベタしていると、あのベルモットという彼女さんに恨まれそうで怖い。
そんな理由で私はポアロへ行かなくなっていたが、しばらく経ったある日ふと思い立った。
ポアロは客観的に見てとても居心地が良く料理や飲み物も美味しい、良い喫茶店だ。
行く必要はなくなったが、行っては行けない訳では無いし、たまに行くくらい問題ないだろう。
それに…
私は掛け時計をチラリと見た。
この時間帯は安室さんはあまりシフトに入らない。
私は携帯と財布を持って家を出た。
「いらっしゃいませ〜!あ、Aさんじゃないですか」
『…』
や つ が い た
『お久しぶりですね』
「ええ、本当に。こちらへどうぞ」
1人でゆっくりするためにテーブル席に行こうと思ったのに、安室さんは私をカウンター席へ案内した。
「いつものですか?」
『いえ、今日はコーヒーだけお願いします』
彼はすぐさま準備に取り掛かった。
私は少し気まずい気持ちで安室さんを眺めていた。
「どうぞ。」
カチャリ、と目の前にコーヒーが出される。独特の香りが登ってきて、鼻孔をくすぐった。
『…美味しいです』
「本当ですか?良かったです!」
安室さんはそう言って、私の前に桃タルトを置いた。
驚いて安室さんの顔を見ると、「サービスです」と安室スマイルを繰り出された。
眩しい。眩しすぎる。
『…いただきます』
桃を頬張ると、久しく忘れていた味が口いっぱいに広がって、意図せず頬が緩んだ。
「…本当に美味しそうに食べますよね」
『え?』
「いえ、何でもないです」
安室さんが何か言ったようだったが私には聞き取れなかった。
「…心配、してました」
「Aさんが、退院の報告から全然来なくなったので、また何かあったのではないかと」
『…どうして安室さんが心配するんです?』
「どうしてでしょうね…Aさんが気になって、仕方ないんですよ」
安室さんが困ったように笑うから、私は何も言えなくなってしまった。
…安室さんはきっと、ハニートラップを続行中だ。
きっと私をまだ疑っているし、ベルモットやバーボンの姿を見てしまった私を警戒しているに違いない。
それでも、私は安室さんのその優しげな瞳から逃げ出すことができなかった。
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椿 - えだまめさん» コメントありがとうございます!!多分どんどんグダグダになっちゃうと思うのですが、変わらず応援してくれたら幸いです! (2020年1月29日 12時) (レス) id: 55324010a1 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ - おもっしろい!夢主ちゃんと安室さんのすれ違いが凄くてもどかしい。でもそのムズムズ感も楽しいです!ストーリーもしっかりしてるけど、サクサク読める速さの流れなので毎回毎回が気になります。更新頑張ってください!応援しています! (2020年1月28日 17時) (レス) id: e05e54b6fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2020年1月16日 19時