覚醒した大罪人 (ページ35)

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第35話ページ35

丘「ふざ…けるな…」

グロキシニア(がくと)は拳を握り締めた。

爪が手の平に食い込むほどに。

“森の留守は俺たち人間に任せておけよ”

“妹が兄の心配をするのがそんなにおかしいですか?”

グロキシニアの脳内に2人の言葉が反響する。

その度に怒りが沸々と湧き上がってくるのだ。

丘「よくも……っ!」

その一言で覚悟を決めたように、グロキシニアは神器を構えた。

ロ『次に生まれ変わったら必ずお前を護る……

お前の大切なものを俺が代わりに護る。どんな姿になろうとな』

ロウも殺される覚悟を決めたように、そう心の中でゲラードに語りかけた。

そんなロウの姿を見て、ゲラードは止めてほしいと目で訴えていたが、ロウは逃げようとはしなかった。

ロ「…またな、ゲラード」

ゲ「ロ……ウ」

グロキシニアが魔力を溜めている中、ロウはゲラードに最後の別れを告げると、グロキシニアの方に向き直り、

ロ「さあ、殺せ」

と一言零した。

丘「あああぁぁぁあああぁぁああ!!!」

ロウの一言を合図に、グロキシニアはついに神器を放ってしまった。

その時のロウは何故か、やりきったような笑顔を顔に浮かべていたのだった。

丘人視点

丘「…何がおかしい」

ロウの笑顔を見て腹が立った。

これから殺されるというのに、何故あんな顔ができるのだろうか。

そんなことを思っていると、脳に何かが流れ込んできた。

『…何がおかしい?』

『虚勢を張るなよ、本当は悔しいんだろう?』

『…バンはあなたが私の兄だと分かったからあえて挑発し、その槍を受けたのよ……』

胸を槍に貫かれて石化している男と、その少し離れている所に浮いている男がいる。

そんな映像が流れ込んできたのだ。

気付けば俺は反射的に拳を握り、猛スピードでロウの元へ進んでいた神器を止めた。

止めた位置はロウの鼻に当たるか当たらないかというギリギリな所で、間に合って良かったと思う。

丘「ぐ……っ」

それでもまだ頭の隅に怒っている自分がいて、複雑な心境だ。

…でも、決めた。

丘「俺は、お前を殺さない」

そう言って、顔を上げる。

丘「な…え…?」

一瞬理解ができなかった。

なぜなら、攻撃していないはずのロウの上半身が、

なくなっていたのだ。

俺が困惑していると、ふと後ろから気配を感じた。

気配のする方を見ると、そこには――

息を荒くして、鬼の形相でロウの方を見ているグロキシニアがいた。

丘「うわああああっ!!!」