覚醒した大罪人 (ページ29)

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第29話ページ29

丘「お前こそ彼らを自分が牢獄から脱出するための時間稼ぎに利用してるだけだろ!

お前の自由のためにどれだけの命を犠牲にするつもりだゴウセル…!!」

気がついたら俺はゴウセルに向かって怒鳴っていた。

でもゴウセルはそんなことにも動じず、ただ静かに言葉を発するだけだった。

ゴ「俺の目的は自由と身なり――

聖戦を終結させることだ」

茉「え…」

丘「……」

聖戦を終結させること…って、どういうことだ。

…というか、結局ゴウセルは自由の身となることが目的なのか。

俺は何も言えずに、ただゴウセルを睨むことしかできずにいた。

…待て。

俺らの目的をすっかり忘れていた。

丘「おい茉林、こんな話をしてる場合じゃない…!早く恩寵の光に向かうぞ!」

茉「あー…丘人は先行ってて」

丘「は?」

茉「少しゴウセルと話がしたいから…」

…まぁ確かに、“聖戦を終結させる”というのが気になるな。

丘「…分かった。気をつけろよ」

茉「うん、丘人もね!」

俺は茉林の言葉に頷いてから、超特急で恩寵の光に向かった。

茉林視点

ゴ「彼はキミの恋人かな?」

茉「は?」

突然そんなことを聞くもんだから思わず声を出してしまった。

何言ってんの。

ゴ「…すまない。まるで永い時を共に過ごしてきたかのような信頼関係だったからな…」

茉「まぁ…幼稚園から一緒だけどさ…そんなこと分かるんだ」

ゴ「俺の戒禁にかからないのが何よりの証拠だ」

茉「戒、禁…」

そうか。ゴウセルって＜十戒＞だったんだ。

あまりにも平和な会話すぎて忘れていた。

…確か、ゴウセルの戒禁は「無欲」だった気がする。

ゴ「俺の戒禁は「無欲」…ありとあらゆる欲を抱いた者は、記憶と感情を奪われてしまう」

茉「うわ、代償重っ…」

ただ欲を抱いただけで記憶と感情を奪われるって…。

…って、聞きたいのはそれじゃなくて。

茉「ねぇゴウセル、さっきの話のことだけど…

本当に聖戦を終わらせることなんてできるの?」

ゴ「可能だ。俺の考えが正しければ聖戦を確実に終わらせることができるはず」

茉「可能なんだ…」

でも、どうすれば聖戦を終わらせられるっていうのだろう。

ゴ「茉林…未来で聖戦は続いているのかい?」

茉「それが…この世界と私がいる世界は違う世界なんだよね…

私がいる世界では、聖戦は起こってないよ」

ゴ「なるほどな…俺の死は無駄にはならんようだ」

茉「え?」

俺の死って…まさか、ゴウセルは死ぬ気なの?

そしたら、人形のゴウセルは…?