hとχ2 ページ22
それから私は何度も何度もその文字の主とやりとりを続けた。
文字の主は科学に関する質問以外は短文でぶっきらぼうだったが、ほっそりとした線で書かれた大人っぽい字は知的で好感があった。
「いったい誰なんだろう」
私はだんだんその文字の主に恋をし始めていた。文字の主はきっと隣のクラスの物静かなシュッとしたメガネのあの人だ。
ああ、好きな人とか居たりするのだろうか。
「彼氏に別れてって言われちゃった」
放課後の屋上。
私は運動部が校庭で激しく運動してる様をみながら友達の別れ話を聞いた。
「え、付き合ってまだ3日とかじゃない？」
私は唐突な別れ話に驚いていたが、周りの友達は「へー」とか「やっぱり」とあまり驚いてなさそうだった。
「告白してきたの向こうなのに」
怒りをあらわにする私に友人たちは「わかってないなぁ〜Aは！」と声をそろえる。
「私も付き合ってみたらちょっと違ったなって思ったし」
「そういうもん？」
「そういうもんよ楽しいのは最初だけ」
「告白しなければ良かったってパターンとかもあるよね」
「夢が壊れた的な」
「わかるわかる！そういえばこの前さー」
別れ話の話題が過ぎ去り、適当な会話でワイワイ盛り上がる友人。
私も文字の主とこうやって楽しく会話出来てるのは姿が見えなくて告白もしてないからなのだろうか。
教室に戻って改めて自分の机をみた。
【好きな人はいますか？】
数時間前に書いた私の文章。
「ふ、ダッサ」
自分で自分の文章に笑ってしまった。
掌で擦るとシャープペンで書かれた文字はゆらゆらと揺れながら型を崩した。
何やってるんだろう私は。
会ったことも話したこともない人に恋してた。そもそも男かどうかもわからないじゃないか。
それからしばらく憂鬱な日が続いた。
昨日も、その前も、その前の日も机に私は何も書かなかった。
そもそもこれから書くことがあるのかな、そんな気さえしてくる。
帰るために自分の席の荷物整理をしようと席に着いた時だった。
【なんか書け】
久しぶりに見た机の上の文字はいつものあの人の字だった。机の文字を楽しみにしていたのは彼も一緒だったのだろうか。
「ふふ、なんも書くことないよ」
そう呟いた私は彼の書いた机の文字の下にまた文字を書き加えた。
「千空、何机をじっとみてるんだ？」
「あ“ぁ、ちょっとな」
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たいやき(プロフ) - 小麦粉さん» ありがとうございます！何か思いついたらまた更新できるようにします！ (2019年12月16日 3時) (
レス) id: 19c5eaa8c0 (このIDを非表示/違反報告)
小麦粉(プロフ) - はしまして！全作品読ませてもらいました！凄い好みで読めて嬉しかったです。続きを待ってます！ (2019年12月15日 8時) (レス) id: 738efae2c3 (このIDを非表示/違反報告)
たいやき(プロフ) - いちかさん» こちらこそリクエストありがとうございました！感想も嬉しいです！^_^ (2019年11月29日 6時) (レス) id: 19c5eaa8c0 (このIDを非表示/違反報告)
いちか(プロフ) - たいやきさん» こんにちは。hとχの続き、読ませて頂きました！こんなに早く上げて頂けるとは…本当にありがとうございました！千空が自分をヒョロガリと称するの可愛いかったです笑 (2019年11月26日 14時) (レス) id: 1198a4bf74 (このIDを非表示/違反報告)
たいやき(プロフ) - いちかさん» ありがとうございます。私も学生時代に想いを馳せたつもりです！笑 リクエストありがとうございます。後ほど書いてみたいと思います！ (2019年11月19日 20時) (レス) id: 19c5eaa8c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たいやき | 作成日時：2019年10月24日 11時
