74.蛍の導くままに ページ45
.
数分の間、私と三代目さんはお互いを預け合っていたが、その後自然と離れた。
思ったよりも近くにある整った顔に少しドキドキしながら、ゆっくりと距離を取る。
「じゃあな……A」
「うん、いってらっしゃい」
「おう」
柔らかな笑みを溢し、三代目さんは私の横を通り過ぎて、そのまま頂上へと階段を登って行った。
見えなくなるまで三代目さんの後ろ姿を見送った後、私はその場にしゃがんだ。
…ただ羽織を返すのと、いってらっしゃいが言いたかっただけなのに、あんな…あんな事しちゃうなんて…！
三代目さんが奴良君である事は夢で見て、分かっていた。
だが、三代目さんと先程の様な事をしてしまったのは気恥ずかしい上、奴良君と会う度に思い出しそうだ。
恐らく奴良君は、私に正体がバレているとは思っていない筈。
「…頑張ってね、奴良君」
本人には聞こえる筈もないが、少しだけでもと応援したくなったのだ。
…さて、と。
下で家長さんと及川さんが待ってると思うし、早めに降りなきゃな。
よし、と気合いを入れながら、私は階段を降り始めた。
その時、ふわりと淡い黄緑色の光を灯した蛍が頬を掠めた。
「あれ…この蛍ってさっき私を案内してくれた…？」
家長さんと会う時には居なくなっていたから、てっきり他の仲間の所へ帰ったんだと思った。
その蛍は、二周程私の周りを飛ぶと、下に向かう方とは違う横道の方に飛んで行った。
帰るのかと思いきや、少し行った先で停止した。
まるで着いて来てと言っているかの様だ。
「……着いて行けばいいの？」
人の言葉なんか分かる筈がないと分かっていながらも、そう聞くと返事をするかの様にくるりと回って飛ぶ。
普通に考えれば蛍が呼んでいるなど、有り得ない。だが、私は呼んでいる風にしか見えなかった。
私は少し考えた後、降りる階段から横道に逸れ、森の中へ蛍に着いて行く事にした。
.
数分後、森の中にしては開けた場所に辿り着いた。
「ここに何が……！？」
私がそこで目にしたのは、倒れている人。
私は慌てて倒れている人の所へ駆け寄る。
どうやら怪我をしているらしく、倒れている地面に血が少量こびり付いていた。
息をしているのを確認した後、持って来ていた救急セットを開け、消毒液と包帯を取り出す。
…何でこんな所で倒れてるのかは知らないけど、取り敢えず応急処置だけでもしよう。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 569人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サヒア(プロフ) - 来霧さん» 返信遅れて大変申し訳ありません！発狂して見てくださってるんですか！？尊い！？神！？嬉しい言葉の連発をありがとうございます！続編に行きましたので、是非是非そちらも続けて閲覧して頂けると嬉しいです^ ^ (2019年8月15日 16時) (
レス) id: f3e12664ea (このIDを非表示/違反報告)
来霧(プロフ) - コメレスありがとうございます！いつも発狂しながら見てます！ほんと尊いです！そして蛍丸まで出してくださって！神！ありがとうございます！！！ (2019年6月10日 22時) (レス) id: cc1c1fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
サヒア(プロフ) - 来霧さん» 本当ですか！？嬉しいです！！これからも頑張りますので、応援宜しくお願いします^ ^ (2019年6月10日 20時) (レス) id: f3e12664ea (このIDを非表示/違反報告)
来霧(プロフ) - ほんとにどんどん面白くなっていきますね！！これからも応援してます！ (2019年5月28日 18時) (レス) id: cc1c1fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
来霧(プロフ) - あぁぁ！！尊い。更新楽しみに待ってます！ (2019年4月24日 8時) (レス) id: cc1c1fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サヒア | 作成日時：2017年12月29日 23時
