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卒業式が終わり、にぎやかだった校庭が嘘のように静まっていくのを窓から垣間見る。
この廊下の先に煉獄のいる社会科準備室がある。あれから何度か煉獄の手伝いをするようになり、毎回来る度ドキドキしていた。
もうここへ来る事もない…。そう思うと寂しさがまた込み上げる。
準備室の扉を開けると、煉獄が腕組みで机に体を預けていた。早鐘を打つ鼓動に逆らってゆっくりとそこに近づく。
「卒業おめでとう」
「ありがとうございます。煉獄先生、これ」
胸ポケットに入れていた、予約券と書かれたチケット風の紙を煉獄に差し出した。今日から使えるその紙に向かって、煉獄がゆっくりと手を出す。
「もう先生ではない」
煉獄がAの手首ごと紙を掴んだ。びっくりして咄嗟に引いたが、逃がさないとでも言うようにガッチリと捕まれる。
瞬きする間もなく掴まれた手首を引っ張られそのまま引き寄せられた。
煉獄の逞しい胸板と腕の中、何が起こったのか、抱きしめられていて。
「せ、せん…せい」
「何も聞かないでくれ。答えられない」
しばらくそのまま体を預ける。心も体も全部煉獄に優しく強く包まれた。
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｢生徒に手を出すとはねぇ」
｢卒業式が終わった後だ。生徒ではない！」
｢式は終わっても書類上は次の日からっしょ｣
｢よも…」
｢ぎりアウトだわ」
｢ぎりセーフだ！卒業式が終了し、学校を出ればもう生徒ではない！」
｢学校出る前でしょ？」
｢………」
｢………」
｢…なぜそれを知っている？」
宇髄と先生たちは心配して気になってちょっとだけ様子を見に行ったんでした。
おわり
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作者名：りた | 作成日時：2023年5月10日 14時
