杏寿郎 0510（そばに３）☆ ページ3
「千寿郎からは言うまでもなく嬉しい」
「ん。千寿郎からだったらなんでも嬉しい」
「その通りだ。同じだぞ」
テーブルに頬づえをつき、凛々しい顔をこちらに向ける。
「君から貰うものならなんでも嬉しい」
「…ぅ」
こうやって嬉しい事を言われるから、イチバンの笑顔になる。
キラキラした瞳で笑うAを見据えながら、柔らかい桃色の頬を、指の背で撫でた。
｢君が生きて俺のそばにいる事こそが最高の贈り物だ｣
さらりと告げられた言葉は、Aが千寿郎がいつも杏寿郎に思っている事。
命を懸ける比重も、背負う重責も自分とは比べ物にならない。
それなのに他人の無事を願う杏寿郎に熱いものが込み上げる。
目頭に一気に水分が集まった後、涙の玉が零れた。
「き、杏寿郎が…ここに…誕生の日を…
一緒に…祝える事…が…。。
涙が溢れ出て言葉に詰まるが、どうしても最後まで言いたい。
手を伸ばし着流しをぎゅっと掴む。
「い…生きて…生きて…
…ここに…居てくれてありがとう…
…お…お誕生日、おめでとう…」
杏寿郎の胸に顔を埋めていると、優しく抱きしめられていた。
「ありがとう。A」
ゆっくりと身体を離そうとするがくっついたままのA。
泣き顔を見られたくない為しがみ付く。
着流しを掴んで踏ん張った。
「ふ、猫みたいだな」
Aの手を握ってゆっくり体を剥がし涙を親指で拭う。
首の所をごろごろ撫でると自然に顔が上を向く。
｢さて。君のその唇に触れてから眠りにつくとしよう｣
ぐちゃぐちゃの顔が気になるけども
言われてするのは恥ずかしいけども
ドキドキしながら杏寿郎の唇が降りてくるのを待つ。
「こいつも最高の贈物だ」
優しくしっとり重なった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「千寿郎、これはなんだろうか」
一枚の画用紙を見ながら千寿郎に問いかける。
｢あ、えーと、Aさんが描いた絵です。これが兄上でこれが僕だそうです。ちなみに、このちっこいのは父上だそうです｣
｢なるほど｣
「Aには俺がこう見えるのか…」
おわり
▼ 千寿郎の絵(上) Aの絵(下)
イラスト
▼ 本編
そばに 3
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作者名：りた | 作成日時：2023年5月10日 14時
