そばに 3【煉獄杏寿郎】

28 鹿鳴館・鬼化 ページ28

 



　 怖い


　 誰かを襲ってしまうかもしれない恐怖


　 禰󠄀豆子はいつもそれと闘って

　 竹を噛み堪え人を守る


　 炭治郎はそんな禰󠄀豆子を命をかけて守る

　 炭治郎だけじゃない

　 鱗崎さんも、水柱様も命をかけた

　 人を襲わないと信じ人間に戻ると信じて


意識が飛んだり戻ったり


「四季風」


両手首を片手で束ね、頭の上で押さえつける

じっとしてられず暴れ出す


「フーー」

口を開けば犬歯が尖って見えた


「じっとしてろ。すぐに終わる」


馬乗りになって体重をかけ、薬を口に含む

顎をぐっと持ち、飲ませようとした


音柱の耳がピクっと動く

外から微かに悲鳴が聞こえたのだ

咄嗟に薬を吐き出し


「押さえてろ！絶対離すな」

　｢｢はい！｣」


音速で悲鳴がした場所へ飛び出していった


体の全部を使い隠と二人なんとか押さえる

さっきより暴れるAに手の力も限界になってきた


「…せん…ぱい、ご…め…」

「四季風！意識しっかり！」


カッと目が開き、押さえていた手を振り払う。隠は飛ばされ隊士が下になり形勢が逆転する

見開いた目からは涙が零れていた。Aもまた自分を保とうと抗っている

隊士の喉元目掛けて噛みつこうとしている自分を、そうはさせないと自分の手を口に噛ませる。隊服にかかっていない皮膚に歯が喰い込み血が滲んだ。


「四季風！手 放しな！」

「フーー」


意識が薄れていく。自分の手を振り払い、隊士の喉元に犬歯を当てにかかる

その場にいた全員がもうダメだと思った



バタンッ



勢いよくドアが開く

喉と犬歯のゼロ距離に硬い腕が割り込まれた

いつもと違う風貌で、だが燃える瞳と髪は揺るぎないその人で


「炎柱！」

「二人ともよく持ち堪えた！」


腕を噛ませたまま後ろからAを抱き抱える


「怪我はないか！」

「｢はい！｣」

「後はこの煉獄が面倒をみよう」


音柱が炎柱の元に鴉を飛ばしていた。非番で歌舞伎を観るため歌舞伎座に来ていた。つまりは目と鼻の先にいたためこの時間でここへ来る事が可能だった

隊服ではなく袴故、顕になっている炎柱の腕を噛み締めていた。少し伸びた犬歯は硬化した筋肉によって止められている


ガッチリとホールドされ身動きが取れなくなり、暴れれば暴れる程身体は抱き押さえられる

鬼の形相で腕を噛み千切ろうとする。目に涙を溢れさせながら



後ろから抱きしめたまま声をかける



「A」



 

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