22 やえさん ページ22
「やえさん! Aが戻った!」
ぱたぱたと音がし、門扉が開いた
横抱きにされたAを見つけ
血相を変えて駆け寄る
「Aさん!」
「寝ているだけだ。驚かせてすまない」
「そうでしたか…」
その場でにへたり込んだが直ぐに立ち上がり
ふー と胸を押さえ
「お布団をご用意致しますので
上がってお待ち頂けますでしょうか」
「うむ、たのむ」
震えた手で布団を敷くやえの目には涙が浮かぶ。流れ落ちないよう堪えているのが分かる
それらをじっと見る
やえも千寿郎と同じ思いをしているのだろう
当初 取り乱したものの直ぐに立ち直り次にやるべき事を把握し迅速に行動する
何よりAの事を大切に思っている
「こちらへお寝かせして頂けますか」
「うむ」
ゆっくりと布団に降ろし泣き止んだ寝顔を手の甲でそっと撫でる
「やえさん、少し話をしよう」
少し強張っている やえを座らせる
「いつも千寿郎の事を気にかけてくれてありがとう。礼を言う
あなたも千寿郎も特殊な家の者として気苦労が絶えないと思う
Aに関しては普通の娘としての生き方もあるだろう。Aの父上もあなたもそれを望んでいたのではないだろうか」
やえがうなずく
「鬼がいる以上1人でも多くの人を守る為、鬼殺隊はなくならない」
「…ですが、Aさんでなくても…」
うつむき小さく言う。目には涙がにじむ
「Aが隊士になると聞いた時、正直、俺も同じ事を思ってしまった」
顔を上げ目を開きじっと見てくる
「だが。Aが決めたことなのだ。ならば、尊重し、見守り、力になる。
理由は違えど我ら隊士はこの道を選んだ。死と隣り合わせの剣士になる事を。
どんな結果になろうともどうか理解してやって欲しい
そして支えになってやって欲しい」
考え込んでいたやえが
「…震えが止まらない、このような私にお支えする事が出来るのでしょうか…」
「素直で気高いAの形成を、あなたが引き出したと言っても過言では無い
生まれた時からずっとそばにいたあなたなら出来る」
「…私が…Aさんの…」
「そうだ」
涙をこらえ言葉を発する時を測り
「あ…りがとうご…ざいます…
しっかり肝に銘じ…お支えしていきます」
多少上ずっていたが覚悟を決めた表情で
しっかりと目を見て言った。
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作者名:りた | 作成日時:2021年4月18日 3時