月とオレンジ 14

423 大切な人 ページ43

「みっくん？」






迎えに来てくれたわりに口数が少ないから

まだ怒ってるのかな…って






伺いながらの帰り道




とうとう部屋の前まで来てしまった








うち来る？

って素っ気なく誘われて






ちょっとだけ戸惑いながら部屋に上がった







北山「…この前は、悪かったな。」






荷物を置いて座る






さっき太輔にも謝ってたやつ





…。







「ううん…私こそ、ごめん。




みっくんの気持ち

考えられてなかったかも。」







『太輔だって忘れたくて

忘れたわけじゃない！』






あんな風に言われたら

余計に卑屈になるのは分かりきっていたのに






…。



…。






ミツ「俺さ…すげー女々しいの。

全然自信ない。」






項垂れる






…。








ミツ「あいつがお前とのこと知りたいとか

言い出して…なんか、すげー焦ってた。」







いつも自信たっぷりのみっくんとは全然違う




溢れ落ちる心のうち







焦ってた…

その言葉に見透かされてるみたいだ





でも…






ミツ「だって、あいつが記憶を取り戻したら

俺の居場所…無くなるんじゃないかって…。」






「そんなこと…」







記憶を取り戻しても…

私が太輔と寄りを戻すことは…きっとない








知りたい…そう言われて嬉しかった






ただ…単純に








でも…咲良さんからの電話に出た太輔を

見て思った






咲良さんとのことを





私はやっぱり…



だから…







ミツ「…マジ、なに言ってんだろ…俺。





すげー情けねー。」





傷ついた横顔








みっくんにこんな顔をさせてるのは…私







小さくしゃがみこむみっくんを

そっと抱き締めた








「…ごめん。」







私…不安にさせてる






こんなに大事な人を







「…みっくん」







名前を呼ぶと、ゆっくりと私を見上げた








ミツ「…どうして謝るの？」







「それは…





みっくんのこと、不安にさせてるから。」







そう言うと戸惑うように瞳が動く






…。




…。









ミツ「あいつに…思い出して欲しい？」





自信ないって顔






こんなみっくん…見たことない








ミツ「…なんて…」







冗談って笑う




私はきっと太輔を許せない









でも、だからって







思い出さなくていい…とは

やっぱり言いきれないから








何も返せない私はみっくんを

また静かに抱き締めた

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