月とオレンジ 10

369 傾いてる？ ページ23

「もしも…

太輔が揺れてたとしても。





私がまた太輔の気持ちを取り戻す。





今まで傷つけた分も

いっぱいいっぱい愛して…

愛して、今度は私が、

一番傍で一番太輔を想う人になる。」







自分で言って驚いた






私はこんな人間だったんだって








太輔をずっと想ってきた彼女の前で

長い間違う人を想っていた私なんかが…

こんな風に愛美さんに言うなんて







だから、また気づく






私は自分が思ってるよりずっと

太輔のことが好きで







その想いが私を図々しい程に強くしている






それも太輔がずっと私を想っていてくれたから






誰かに愛されるってすごいことだ








愛美「なにそれ…そんなの…

絶対に一時の…」






愛美さんが

私を責める言葉を並べようとしたとき







カタカタカタン






って、アパートの階段を

誰かが降りてくる音がして







そちらを見上げると

手に女性もののコートを持った太輔だった









太輔「居ないと思ったら

こんなとこに居たのかよ。




風邪引くだろ。」








持ってきたコートを愛美さんに着せた







…。







『太輔は揺れてるよ』







揺れてる…っていうより

もう傾いちゃってるんだねって






おおみえきってみたけど、なんか…ズキンって







「…体調、大丈夫？」






愛美さんの傍らに立つ太輔







太「うん。


…愛美が手伝ってくれたから。」







…。






「ごめんね…全然気づけなくて…

あの、これよかったら…」





コンビニの袋を差し出すと







太「ありがとう。

でも俺、ちょっと愛美と話したい。」







愛美…






そっか…受け取ってもくれないんだ







「そっか。分かった。

邪魔して…ごめんね」







そう言って帰ろうとしたとき







太「待って。

違くて…部屋に運んでおいて。」






え…






太輔と目が合うと、「鍵開いてるから」って







「…分かった」







私はふたりを残して

太輔に言われた通り部屋に向かった

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