月とオレンジ 4

162 キス！？ ページ16

朝目を覚ますと

藤ヶ谷先輩が

隣のベッドで寝息をたてていた








私……昨日、頭撫でて欲しいなんて

頼んでおきならが、あのまま寝ちゃったんだ







鞄に無造作につっこんだままの充電器

夢……だったらいいのに








充電器を見つけて意気揚々と

みっくんの部屋に入ったものの







まさか、ふたりがあんなこと








不幸中の幸いだったのは

声をかける寸前で事態を飲み込めたということ







みっくんとは一瞬目が合ってしまった気が

したけど、美紀さんはきっと

気づいていなかった








あんなところ、私に見られたなんて

すごく嫌だろうし







いや、私だって

見たくなかったけど









今日、どんな顔して

みっくんに会えばいいんだろ








朝日に透ける藤ヶ谷先輩の髪





整った顔立ちと長い睫毛







いつもは大人っぽいのに寝顔はあどけない








『あと少しだけ……』






『撫でて欲しいなって』








優しく包み込んでくれる広い胸と

大きな手が私を慰めてくれた







何か言うわけでもなく静かに







藤ヶ谷先輩は不思議だ






先輩といるとドキドキするんだけど

自分が自分でいてもいいんだって安心する







でも、いつからだろ







私の安心できる場所は

ずっとみっくんの隣だったはずなのに







……。








藤「ん……んー。」







眠りが浅くなってきたのか

もぞもぞと寝返りをうっている








「先輩？」







起きるかなって、近寄って声をかけると







グイって腕を引き寄せられて

藤ヶ谷先輩のベッドに倒れこんでしまった







わ//








藤「おはよ。……咲良」






え……






ぼんやり目を開けた先輩







大きな手が後頭部に添えられ

先輩の顔が私の顔に近づいてきた







え//

キ、キス//







「ちょ//せ、先輩！//待って//」







って、必死に抵抗すると







藤「え……」







寝ぼけてた藤ヶ谷先輩の瞳がパッと見開いた








藤「ご、ごめん//


俺、今寝ぼけてた！？//」







って、体を起こすから









「キャ//」






って、バランスを崩して先輩の上に

抱きつくみたく覆い被さってしまった







「す、すみません//」








体を起こすと、目の前に先輩の顔が……







目が合うと昨日のことが頭をよぎる








でもそれは藤ヶ谷先輩の

温もりだけじゃなくて…





昨晩目にしたみっくんの……







……。

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