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＊162 守りたいもの 11 ページ11
気が付いた時､私の側に衛輔がいた｡
衛輔の両腕は解放されていて､私の腕を縛っているロープを外してくれた｡
それから自分の着ているジャージを脱いで､私に着せてくれた｡
｢ごめんな､雄一郎…､本当にごめん…｣
衛輔は泣いていた｡
ボロボロ涙を零して衛輔は泣いていた｡
…衛輔のせいじゃないよ…､謝らないで…
そう言おうとしたけど､私は言葉を発することが出来なかった｡
声が出ない…｡
｢怖かったよな？悔しかったよな？本当にごめんな…｣
衛輔はそう言い､後ろを向いてるから衣服を直すようにと言ってきた｡
衛輔が私に背中を向けると､私はジャージのファスナーを上げ､下着とズボンを着直す｡
着衣の乱れを直し終わると衛輔の肩をぽんぽんと軽く叩いて合図をした｡
衛輔が振り向く｡
私は合宿のしおりの余白にズボンのポケットからボールペンを出すとそれに
"衛輔のせいじゃないから謝らないで"
そう書いて衛輔に見せた｡
｢…雄一郎…､もしかして…､声が出ないのか…？｣
そう訊ねてくる声が震えている衛輔｡
私は小さく頷いて肯定した｡
衛輔はポケットからスマホを取り出す｡
｢…黒尾に電話を掛けて来てもらおう…｣
衛輔は鉄朗に電話を掛け始めた｡
｢…もしもし…､黒尾…？｣
･
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作者名：Musashi | 作成日時：2017年2月28日 9時
