STORY54 理性 ページ10
止まらなかった。
口と口を合わせるだけなのに、それがしたくてしたくて仕方がない。
徐々に合わせるだけじゃなく、彼女の口を啄むように貪った。
Aさんの慣れない様子を見る限り、多分向こうも初めてだ。
このまま服を脱がすなんてあっちゃならねェ。
だから…キス、だけ。
キスだけでいいから、もう少し温もりが欲しかった。
長いこと会わずに待ってたんだからこのくらい許されるだろィ？
「ごめ、もうちょっとだけ…っ。」
「…っん…。」
Aさんのたまに漏れる声も、色っぽい表情も、俺の興奮を誘うには十分だった。
つい、Aさんの口が緩くなった隙を見て、舌を入れた。
「…っん！？ まっ……あ…。」
驚くAさんをよそに、Aさんの口内をしばらく犯した。
…その大好きな目から涙が溢れるまで。
しまったと思った。
初めての相手にやりすぎた。
いや俺も女に縁はねーし初めてだったんだが。
我に返ったようにばっと身体を離した。
「…すいやせん。今日はもう帰ってくだせェ。」
「え、でも…。」
「…送りやすから。」
本当に、やばかった。
あのまま押し倒して、着物をひん剥いてしまいたくなるほど、とろけたあの顔。
崩れかけの理性をとめたのは、結局彼女の涙。
…最低だ。
自己嫌悪に陥り、上着を取ろうとAさんに背を向けた。
「っ待って！」
背後からAさんに抱きしめられた。
腰に回った細い腕は、俺に行かせまいと強い力を入れた。
それでも女の力だった。
心臓が甘く疼いて仕方なかった。
「嫌だったわけじゃない。…少しびっくりしただけなの…その…初めてだったから。息の仕方とか…。」
「…本当？ 本当に、嫌じゃなかったんで？」
「当たり前でしょ…す、好きな、人なんだから…っ。」
「ありがとうごぜーやす…。」
やりすぎた馬鹿な頭を冷やそうとしてたのに。
こうやって優しく慰めてくれるから、俺は調子に乗るんでィ。
Aさんの腕の中でくるりと回り、抱きしめ返した。
「それでも、初めてってわかってたのにやりすぎやした。…すいやせん。」
「んーん、いいよ。」
「Aさんもかわいー顔してたからつい…。」
「…一応聞くけど、どんな顔？」
「俺が欲しいって顔かねィ。」
「そ、そんな顔してないよ！」
さっき一瞬凍った空気がもう元通りだ。
本当、Aさんはすげーや。
最後に一瞬口付けをし、Aさんを家まで送った。
幸せすぎて死ぬかと思った。
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たいる(プロフ) - れれんさん» ありがとうございます！コメントくださり嬉しいです。 ご期待に添えるよう励みます！ (2021年3月20日 16時) (
レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
れれん - 初めまして。完結おめでとうございます！番外編も楽しみにしています！ (2021年3月18日 19時) (レス) id: 495a38581f (このIDを非表示/違反報告)
たいる(プロフ) - みけさん» ありがとうございます…！初めてコメントを頂き、本当に嬉しいです！人物像にこだわって書いていたので、夢主さんの美しさをわかって頂いて本当に感無量です…！できる限り早めの更新を心がけますので、これからもよろしくお願いします！！ (2021年3月6日 1時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
みけ(プロフ) - とっても美しい人物像をお作りになりますね…！たいるさんのきめ細やかな心がなせる技だと思います！一気読みしてしまいました…！更新楽しみにしてます！あ、でもご無理はなさらず！ (2021年3月5日 0時) (レス) id: 44e1804c7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たいる | 作成日時：2021年2月21日 23時
