STORY50 溢れたソレは ページ6
座布団の上に向き合って座り、事の顛末を総悟君に話す。
彼はなぜか怒った。
「はあ？ …Aさんはそれでいいんで？」
「え、と…それでって？」
何で怒ってるんだろう…。
私が何かしただろうか。
「母親にそっくりだから辛いっつーわけのわからん理由で9年も無視され続けたけど、ちゃんと愛していたから苦しかったとか。謝罪とか。…それだけですかィ？ あの家から逃げるほど苦しかったAさんの気持ちはどうなるんでィ…。」
ああ、私のために怒ってくれているんだ。
そう思うと顔が綻んでしまう。
(いけない、総悟君は怒ってくれているのに。)
案の定、何笑ってるんですかィと総悟君は拗ねた。
優しいなぁ、可愛いなぁ。
私の脳内はそんなところだろうか。
「ふふ、ごめんごめん。総悟君が私のために怒ってくれてるのが嬉しくて。馬鹿にしてるわけじゃないのよ。」
「もう…俺は真面目に…。」
「ごめん、わかってる。ありがとう、私の代わりに怒ってくれて。」
静かに、確かに総悟君に語りかける。
少し気恥ずかしいけど、総悟君は真面目に聞いてくれる。
「…確かに納得いかないこともあるし、何だそりゃって気持ちもいっぱいあったんだけど…総悟君が怒ってくれたから、どうでも良くなっちゃった。」
「何ですかそれ…。」
総悟君は呆れたように笑った。
そんな時間が堪らなく幸せで、つい、溢れた。
「＿＿＿＿好き、だなぁ。」
あ、れ…？
私、今なんて…。
はっと気づいた時にはもう遅く、漏れたものはもう戻せない。
彼の顔を咄嗟に見ると、目を見開いた上で固まっていた。
結構小さな声で呟いたので、聞こえてなかったのでは…という淡い期待は消え去った。
溢れた本音に動揺して焦点が定まらない。
どうしよう、どうしよう、なんて言えば。
「あの、今のは…。」
「何が、好きなんですか。」
「えと…。」
総悟君は私を期待するような目で見やり、口を開いてはつぐんだ。
それを数回繰り返すと、やがて声を発した。
私の喉はカラカラで音が出そうにない。
「Aさんは、俺のこと…好きなんですか。」
「…。」
「…黙ってちゃ、わかんねーよ。…教えて？」
心の準備をする前に紡がれた言葉は、もういっぱいいっぱいだった。
総悟君の真っ直ぐな目には真っ赤になった私の顔が映っていた。
(あ、もうダメ、隠しきれない。)
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たいる(プロフ) - れれんさん» ありがとうございます！コメントくださり嬉しいです。 ご期待に添えるよう励みます！ (2021年3月20日 16時) (
レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
れれん - 初めまして。完結おめでとうございます！番外編も楽しみにしています！ (2021年3月18日 19時) (レス) id: 495a38581f (このIDを非表示/違反報告)
たいる(プロフ) - みけさん» ありがとうございます…！初めてコメントを頂き、本当に嬉しいです！人物像にこだわって書いていたので、夢主さんの美しさをわかって頂いて本当に感無量です…！できる限り早めの更新を心がけますので、これからもよろしくお願いします！！ (2021年3月6日 1時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
みけ(プロフ) - とっても美しい人物像をお作りになりますね…！たいるさんのきめ細やかな心がなせる技だと思います！一気読みしてしまいました…！更新楽しみにしてます！あ、でもご無理はなさらず！ (2021年3月5日 0時) (レス) id: 44e1804c7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たいる | 作成日時：2021年2月21日 23時
