STORY48 おかえり ページ4
とりあえずわだかまりもなくなったわけで。
江戸に帰ろうとするも、せっかく帰ってきたんだからと引きとめられ早2週間。
流石に、またいつか帰るからと江戸に戻ってきた。
今度は父上にも報告して。
父上とウメさんは側からみればただの主従関係だが、関係を知ってしまえば全くの別物に見えた。
…お似合いだ。
兄上は相変わらず軽薄にまたなと笑い、弟の楓は少し不満そうな顔でバイバイと私から視線を逸らした。
意訳すれば、早くまた帰ってきてね、だ。
そして、今は団子屋にいる。
穏やかな顔で迎え入れてくれたおばあちゃんと、おじいちゃん。
私は、総悟君に会いに行かなければいけない、のに。
あれから2週間経ってるのだ。
こんなに会わなかった期間はなかったし、もう忘れられてしまっていたら…なんて。
ありもしない不安に駆られる。
それに会ったら気持ちを伝えなければいけない気がして。
もちろんそんなこと誰も言っていないし、そんな約束もしていない。
そんなこんなで真っ先に会いに行くって約束したのに、勇気が出ない。
___結局、決心には2日の時間を要した。
_____
__
「__遅かったですねィ。…待ってたぜ?」
バクバクと鳴り止まない心臓を押さえ、真選組の屯所の門をくぐる。
一番最初に出会った隊士に総悟君を呼ぶよう頼むと、すぐに来た。
体感時間では1分も経っていないように感じたが、実際はもう少しかかっていたのかもしれない。
なんせ心臓がうるさくて落ち着かない。
「…ごめんね。」
「噂には聞いてやした。団子屋の看板娘が久しぶりにいるって。…真っ先に会いにくるって言ったのに。」
「…ごめん。」
総悟君との約束を破ってしまった私はもう謝るしか言葉が思いつかなくて、ロボットのようにごめんを繰り返した。
自然と眉が下がる。
頭の中では思考を巡らす余裕もなくただどうしようどうしようと思うだけで、口から出る言葉はごめんしかない。
「俺の前には誰に会いに行ったんで?」
意図のわからない質問に、働かない頭を無理やり動かす。
江戸に帰ってきた一昨日の記憶を辿った。
「…おじいちゃんとおばあちゃんだけだよ。あとは団子屋にきたお客さん。」
「へえ…なら、ちっとは勘弁してやらァ。会いに行ったのは俺が初めてみてーですからねィ。」
「へ…。」
唐突に腕を引かれ、ふわりと熱が私を包んだ。
___おかえり。
彼の声はどこまでも優しく、熱がこもっていた。
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たいる(プロフ) - れれんさん» ありがとうございます!コメントくださり嬉しいです。 ご期待に添えるよう励みます! (2021年3月20日 16時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
れれん - 初めまして。完結おめでとうございます!番外編も楽しみにしています! (2021年3月18日 19時) (レス) id: 495a38581f (このIDを非表示/違反報告)
たいる(プロフ) - みけさん» ありがとうございます…!初めてコメントを頂き、本当に嬉しいです!人物像にこだわって書いていたので、夢主さんの美しさをわかって頂いて本当に感無量です…!できる限り早めの更新を心がけますので、これからもよろしくお願いします!! (2021年3月6日 1時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
みけ(プロフ) - とっても美しい人物像をお作りになりますね…!たいるさんのきめ細やかな心がなせる技だと思います!一気読みしてしまいました…!更新楽しみにしてます!あ、でもご無理はなさらず! (2021年3月5日 0時) (レス) id: 44e1804c7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たいる | 作成日時:2021年2月21日 23時