番外編3_入り混じる敬語(1) ページ26
・・
Aさん、デート行きやせんか?
・
Aさん、この料理美味しいでさァ。
・
…かわい。
・
もっと俺だけ見て。
・・
彼はいつも、敬語とタメ口が入り混じる。
本当の彼は、きっと敬語を使うようなタイプじゃないんだろう。
無理、させてるのかな…。
てかもうすぐ結婚するのに敬語って…気遣わせてるのかな。
「あり、Aさん? 浮かない顔。どーした?」
総悟君は私のことをよく見ているんだと思う。
すぐに私の変化に気がつく。
そこがまた、少し申し訳ない。
「…総悟君はどうして私に敬語なの?」
「え? あー最初敬語だったんで、流れでって感じですかねィ。」
「でもちょくちょく敬語外れるじゃない。」
「え? 本当ですかィ?」
「…自覚ないの?」
本当に自覚がないようで、一生懸命考えてる。
「無理してたり、年上だからって気遣ってるとか…。」
「それはありやせん! や、親しき仲にも礼儀はありやすけど…そうじゃありやせんよ。」
「じゃあ、なんで…。」
「なんで…か。何でだろ。」
無意識に、とか…。
少しネガティヴになる。
…ダメだ。
こんな子供みたいなこと。
総悟君も困ってる。
一所懸命思考を巡らせる彼に申し訳ない気持ちが募る。
私もだんだん焦りが芽生えてきて、思考が鈍ってきた。
とどのつまり、出来心だったのだ。
「っえ…。」
総悟君の思考が止まり、目が丸くなる。
それもそのはず、私から彼に口づけをしたからだ。
一瞬でも思考を逸らせたら…と、軽い気持ちで。
咄嗟に起こした行動は、私の思考をさらに鈍らせた。
「へーえ…初めてAさんからキスされやした。」
「えっと、あの…。」
自分でも目が泳ぐのがわかる。
彼の目は見れない。
今見たら、確実に負ける。
「昔はキスするときに目を閉じることすら忘れるくらい慣れてなかったのに。ついに自分から…。」
「言わないで!!」
熱を持ち始めた私の顔がどんどん俯く。
「顔、上げて?」
「っ!!」
顔を上げると彼と目が合う。
彼の目に映る私の顔は、言わずもがな。
「ねえ、今どんな気持ち? 自分からあんなことしといて、まさか恥ずかしいの?」
う…あ…と言葉にならない声を漏らす私に、彼はさらに笑みを深め、目をギラつかせた。
そこでハッとしたような顔に変わる。
「…っあーなるほど、わかった。俺が敬語じゃなくなる瞬間。」
「…え?」
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たいる(プロフ) - れれんさん» ありがとうございます!コメントくださり嬉しいです。 ご期待に添えるよう励みます! (2021年3月20日 16時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
れれん - 初めまして。完結おめでとうございます!番外編も楽しみにしています! (2021年3月18日 19時) (レス) id: 495a38581f (このIDを非表示/違反報告)
たいる(プロフ) - みけさん» ありがとうございます…!初めてコメントを頂き、本当に嬉しいです!人物像にこだわって書いていたので、夢主さんの美しさをわかって頂いて本当に感無量です…!できる限り早めの更新を心がけますので、これからもよろしくお願いします!! (2021年3月6日 1時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
みけ(プロフ) - とっても美しい人物像をお作りになりますね…!たいるさんのきめ細やかな心がなせる技だと思います!一気読みしてしまいました…!更新楽しみにしてます!あ、でもご無理はなさらず! (2021年3月5日 0時) (レス) id: 44e1804c7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たいる | 作成日時:2021年2月21日 23時