STORY46 時ガ止マッタ ページ2
「今更謝罪などいらん。とっくにお前は勘当した身だ。…ウメが必死に頼む故、屋敷に入れ、話も聞いた。気が済んだならさっさと江戸の大切な人とやらの元へ帰れ。」
…勘違い、だったんだろうか。
全ては父からの愛を諦めきれなかった私の妄想。
あくまで冷たい父の声で、過去の辛く寂しかった記憶が蘇る。
＿＿＿＿＿
＿＿＿
「父上、見てください！ テストで満点を取ったのです！」
「…。」
「父上、今日は先生に褒められて…。」
「…。」
「父上っ！！」
「…。」
「…父上、私のことがお嫌いですか？」
「…。」
＿＿＿
＿＿＿＿＿
拒絶よりも何よりも、無反応が辛かった。
私はここにいて、生きているのに。
何度もそう思った。
そのくせ私以外とは普通に話すんだから、やってられない。
思い出した記憶は、最も簡単に私の瞳を潤した。
でもソレが溢れるのはプライドが許さなかった。
「…いい加減になさってはいかがですか、旦那様。」
「ウメさん…？」
ウメさんが静かに、沸々と怒りを父にぶつけた。
彼女の父を咎めるような声に心底驚く…が、そんな場合ではない。
(まずい、ウメさんがクビになってしまう。)
いくら侍女長と言っても、所詮は主人と従者。
主人は父なのだから、逆らえばどうなるかは目に見えていた。
だから5年前だって表立って父に歯向かうことも、私に味方することもなかった。
いや私がさせなかった。
ピクリと眉を動かした父は、ウメさんを厳しい目で見やった。
「奥様が亡くなってからもう14年も経ちました。貴方はもうそれを乗り越えられたし、突き放す道理はないでしょう。」
「お前…。」
「そんなつまらない意地はそこのゴミ箱にでも捨てておしまいなさい。…本当は、わかっているんでしょう。」
…ずっと励ましてくれた。
父が突き放し続けた当時、落ち込む私の味方をし続けて慰めてくれたのはウメさんだった。
父が怒りに震えても、彼女は強気に、諭すように言った。
彼女が職を失うかもしれない危機に、嬉しさで視界が歪む。
こんな感情間違ってるかもしれない。
でも目元で必死に堪えた、さっきとは異なる意味のソレは、本物だった。
それでも零さなかったのは、プライドのためなんかじゃない。
まだ父と戦う意思があるからだ。
彼女はきっと職を失う。
でもそんなことさせない。
だって彼女は私を想って＿＿
「ふ…お前は本当に強気で生意気で＿＿いい女だな。」
＿＿＿父ガ、笑ッタ。
＿＿＿時ガ、止マッタ。
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たいる(プロフ) - れれんさん» ありがとうございます！コメントくださり嬉しいです。 ご期待に添えるよう励みます！ (2021年3月20日 16時) (
レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
れれん - 初めまして。完結おめでとうございます！番外編も楽しみにしています！ (2021年3月18日 19時) (レス) id: 495a38581f (このIDを非表示/違反報告)
たいる(プロフ) - みけさん» ありがとうございます…！初めてコメントを頂き、本当に嬉しいです！人物像にこだわって書いていたので、夢主さんの美しさをわかって頂いて本当に感無量です…！できる限り早めの更新を心がけますので、これからもよろしくお願いします！！ (2021年3月6日 1時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
みけ(プロフ) - とっても美しい人物像をお作りになりますね…！たいるさんのきめ細やかな心がなせる技だと思います！一気読みしてしまいました…！更新楽しみにしてます！あ、でもご無理はなさらず！ (2021年3月5日 0時) (レス) id: 44e1804c7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たいる | 作成日時：2021年2月21日 23時
