STORY06 帰り道 ページ8
このあと小一時間話した。
Aさんの話が上手いのか全然苦痛にならず、むしろ楽しかった。
Aさんには兄と弟がいること。
今は団子屋に住み込みでお世話になっていること。
おかしな常連のお客さんのこと。
いろんな話をするうちにだんだん緊張も解け、砕けた会話もできるようになっていた。
明らかに少し年上であるAさんには、敬語を外してもらうよう頼んだ。
「じゃあ、そろそろ行こうか。」
話が弾み、思ったより長居してしまった。
お代は彼女の分も一緒に支払う。
年下にどうこうと申し訳なさそうにしていたが、稼ぎはこちらの方がいいと納得してもらった。
もう姉上の治療費もかからない上、あまりお金を使うこともないため溜まる一方だった。
今度店に来たらサービスをして返してくれるとのことだ。
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___
少し暗くなった帰り道。
これから日が長くなるとはいえ、まだ夏までは少しある。
Aさんの団子屋まで送ることにした。
これまた遠慮されたが、無理やり納得させた。
1人で帰らせるわけにはいかねーからな。
少し道を変えれば通り道でもある。
割と近かったので、すぐに目的地には着いた。
「本当に楽しかった。」
「そりゃ良かったでさァ。」
「奢ってくれたのも、送ってくれるのも…ありがとう。」
「全然大丈夫でさァ。」
申し訳なさそうに、でも嬉しそうに。
少し照れながら礼を言われる。
団子2つなんか高ェわけねーし、送るなんてほぼ通り道なんだからいいのに。
でもまァ、自分がその顔をさせていると思うと悪くねェ。
「今度お店にも来てね。きっとサービスするから。」
「それはありがてェ。今度行きまさァ。」
「ちゃんとお腹空かせてくるのよ?」
「はい。」
「もう、絶対だからね。」
「はいはい、わかってますよ。」
貴方は俺の母親ですかィ?
あァ、姉上か。
そういえば俺の母親代わりはずっと姉上だった。
本当、そういうの弱いんでさァ。
やめてくれ。
もう会わないつもりだったのに、会ってしまった。
会っちゃいけねーと思いつつ、仲良くなるなんて。
とんだ阿呆だ。間抜けだ。
もう、戻れない。
Aさんに会う前の自分には。
「じゃあ、また。Aさん。」
「うん、またね。総悟君。」
Aさんがちゃんと中に入り、扉を閉めたのを確認し、踵を返した。
___また、会いてーな。
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たいる(プロフ) - わかさん» こっちにもコメントくださってたんですね!笑ありがとうございます。笑っていただけて良かったです笑笑 (2021年7月11日 17時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
わか - ミョウバンは笑った!!笑笑 (2021年7月7日 21時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たいる | 作成日時:2021年1月8日 0時