STORY30 帰り道 ページ32
「Aさんお待た…あり、土方まだいたのかィ。」
「てめーはいつになったら俺に敬称と敬語使えるようになんだ。…終わったのか?」
「終わりやした。特に長引く怪我もありやせんし、日常にも業務にも支障はきたさねェそうでさァ。」
「そうか。じゃあ俺は報告も兼ねて戻る。総悟も送ったらすぐ帰ってこいよ。」
「途中で寄り道でもしながらゆっくり帰らァ。」
「てめーは言うことも聞かねーな本当。」
やっぱり、仲良しだ。
土方さんは上司なのに。
なんだか総悟君には甘く見える。
「ふふふ、仲良し。」
「誰がだ。」
「誰がですかィ。」
「そういうところですよ。」
「…はあ。じゃあなA。」
「はい、お気をつけて。」
・
・
「俺たちも帰りやしょうか。」
土方さんが出ていくのを確認したあと、総悟君の一言で私たちは歩き出した。
隣を歩く総悟君は、気づいたら車道側を歩いてくれている。多分。
スマート過ぎてわからないのだ。
意図的なのか、たまたまなのか。
…紳士だなぁ。
「土方さんと仲良いけど、付き合い長いの?」
「武州にいたころからの仲でさァ。…あいつと仲良いなんて気持ち悪ィんでやめてくだせェ。」
「ごめんごめん。結構長い付き合いなんだね。」
気心知れた仲なんだな。
本当に気持ち悪そうな顔だ。
「全然思ってねーでしょうそれ…。」
「バレた?」
どうしても笑みが溢れる私に、仕方のねー人だと総悟君も笑う。
「俺ら真選組のトップの近藤さんが、武州で剣を教えてくれてたんでさァ。そこに途中で入ってきたのがアイツ。」
「なるほど。」
「近藤さんのためなら、俺ァ命かけれやすぜ。」
「そっかぁ…。大切な人なのね。」
「もちろん、大切でさァ。…真選組の要でィ。」
命。
こんな重たい言葉、なかなか使わないから少し心にきた。
「…俺は、こういう男でさァ。……がっかりしやしたか?」
「がっかり? …どうして?」
「いーや、何でもありやせん。」
総悟君は少し安心したようにホッと息をついた。
でもどこか寂しそうに、何かを迷うように、道歩むのだ。
目は前を向ききっていない。
…そこで、私は気がついてしまったのだった。
___なんだ。まだ気づかねえのか?
いいえ土方さん。
私はそこまで鈍感ではいられなかったようですよ。
貴方のヒントが教えてくれました。
100%とは言い切れないけれど、もしかして。
______総悟君も同じ気持ちでいてくれてるってことですか?
STORY31 少しのお別れ→←STORY29 土方の心配事(2)
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たいる(プロフ) - わかさん» こっちにもコメントくださってたんですね!笑ありがとうございます。笑っていただけて良かったです笑笑 (2021年7月11日 17時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
わか - ミョウバンは笑った!!笑笑 (2021年7月7日 21時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たいる | 作成日時:2021年1月8日 0時