FK短編集

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Ki side


しぶしぶソファーの上に座って太輔の髪を乾かし始める。
最初は何も言ってなかった太輔だけど、しばらくすると
 

 
「宏光、下手だね」
 

 
と笑って言ってきた。くそ…やったことなくてやりなれてねえんだよ！
 
 
 
あれ…？そういえば、太輔、誰かと比べてんの…？



カチッとドライヤーを消す。
 
 
「あれ、終わり？まだ乾いてねえじゃん…って宏光？」
 
 
「誰…」
 
 
「なに？」
 
 
「誰と比べてんの」
 
 
 
こんなこと言ったって解決しないことくらいわかる。
でも、聞かずにはいられなかった。


太輔は何言ってんだみたいな顔でこちらを見る。


前の…彼女の方がうまかった？
 
だめなのに、こうして考えては苦しくなる。
 
 
 
「誰とって…俺と？」
 
 
「は？」
 
 

意味わかんない、ごまかし、下手過ぎない？
 
 
 
「ねえ、ちょっと、宏光何考えてんの」
 
 

太輔は俺の隣に座ってきて、ぺちっと両手で俺の頬を挟む。
 
 
 
「俺、宏光にしかやったことないよ、髪乾かすなんて。」
 

 
「正直ね、自分の乾かすだけでめんどくさいのに、人のなんてやりたくないの」
 

 
「それから、本当に今人生で初めて恋人に髪乾かしてもらった。」
 

 
嬉しい言葉と、まじか、と言いたくなるような暴露が交互に突き刺さる
 

 
「…これからは髪の毛、ちゃんと自分でする」
 

 
もうわがまま言わないから、自分でちゃんとやるから、だから俺以外のところにはいかないで、心でそう呟いて、太輔に甘えるようにぎゅっと抱き着く。
 
 

太輔はそんな俺をそっと抱きしめ頭をポンポンとしてくれた。
 
 

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