30-12 ページ48
次の日､街の病院にて…｡
嶺亜サイド
コンコンコンと､ノックの音がしてから「失礼します」と看護師さんが入ってきた｡
俺が入院してから担当している女性看護師で､確か名前は…泉さん｡
泉「おはようございます｡よく眠れましたか?」
嶺亜「あー…昨日は､あまり」
泉「そうですか｡あっ､そうそう｡今朝､中村さんのご友人が来まして､手紙をお預かりしてきました」
嶺亜「俺に手紙…?どうも…(泉から手紙を受け取る)」
泉「朝食､お持ち致しますね｡失礼しますm(_ _)m」
泉さんが病室を出ると､受け取った手紙を見つめた｡
『中村嶺亜様』
差出人は…今野大輝?昨日､来たアイツかよ｡
嶺亜「…読んでみるか」
ローズピンク色の封筒を開けて､便箋を開くと桜が散りばめられた可愛らしい便箋だった｡
俺は便箋に目を通し､読み始める｡
嶺亜「拝啓､記憶を無くした幼馴染みへ…」
大輝『拝啓､記憶を無くした幼馴染みへ｡嶺亜に手紙を書くのは､これが初めてだったな｡お前は記憶を無くしたから知らないだろうけど､俺はお前の幼馴染みなんだ｡そして､水の精霊・オンディーヌ一族の人魚｡嶺亜もオンディーヌ一族の人魚なんだ』
嶺亜「オンディーヌ…一族…人魚…」
大輝『昨日､俺がお見舞いに来た時に言ったな｡「お前の事なんて､知らない」って｡記憶が無いからそう言ったのだろうけど､俺はショックで怒りと悲しみが混じっていたんだ｡つい､「お前なんか大嫌いだっ!」って､想ってもない事を言ってしまった｡俺､きっとパニックになっていたのかもな』
嶺亜「…」
大輝『俺は嶺亜が心配で何回もお見舞いに行った｡けど､何て声を掛けようか分からなかった｡記憶喪失になったって聞いたからね｡最初は信じなかったけど､大我様…お前のお兄様から聞いた｡大我様は､俺以上にショックを受けていたからな…』
嶺亜「俺には…兄が…いる…?」
大輝『嶺亜は俺の事を知らないと言っていたから､覚えてないよね｡けど､俺は覚えている｡湖の底の住処にある学校で一緒に勉強したり､時には一緒にサボったり､楽器をセッションしたり､湖の外に興味が無い俺を無理矢理､連れていって海の中にある沈没船へ冒険に行ったり､音楽会に出場したり､涼が作ってくれたクッキーを瑞稀と一緒に食べたり…お前と過ごした思い出は､1度も忘れていないよ』
嶺亜「…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：セーラーローズ | 作成日時：2023年9月11日 21時
