光と闇に、二つの世界の胎動２【五条悟】 (ページ28)

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28.一方的な熱ページ28

硝子ちゃんと歌姫先輩と出かけてから心の靄はどこかへ飛んで行ったようだった。空から降り注ぐ光が私の体を駆け巡る、世界の輪郭がはっきりしたような、そんな気持ちになった。

「悟」

夜、悟の部屋に行く。もう、怖くないよ。そう自分に言い聞かせて。

ドアをノックすると数秒待って扉が開いた。サングラスの隙間から少し驚いたような青い瞳が見えた。

「……A」

そのまま扉を閉めて私は悟の部屋に入る。久々な気がした。

私が部屋の中に足を進めて、悟が後から追いかけてきた。悟はきっと久しぶりに私が来たことで驚いているんだろうな。

「この前私、硝子ちゃんたちと出かけたでしょ」

クッションの上に座って、悟を見上げる。私を見下ろす瞳は僅かに揺れているようだった。そのまま悟は私の隣に腰をかける。

「そのとき気づいたの。私みんなに本当に大切にされてたんだって」

思い出して、口角が上がる。暖かい気持ちが胸の奥に広がる。悟にも伝えたかった。あの時感じた陽だまりみたいな感情。

「今度は私が皆を助けたい。まだまだ私は未熟者だし、皆より断然弱いけど、悩んでる時話を聞いたり、それこそ補助監督としてみんなをサポートしたり……」

そっと悟の青い瞳を見つめる。サングラスに隠れてその瞳は見えなかったけれど。今は恐怖は感じない。

もう、あんな距離感はやめよう。
悟ともう一度。ちゃんとその気持ちに応えたい。

「悟が大切にしてる世界で、私も皆を大切にしたい」

そう思うようになって、眠れなかった夜も眠れるようになった。

そっと、悟の手を握る。ぴくり、と悟は一瞬固まったけれど、何も言わず私の手を受け入れた。

「だから、悟。私のこと、見ててね。」

また、あの約束をしよう。

繋いだ手はそのままに。私から悟の唇に1度だけ優しいキスをした。

久しぶりのキスに驚いたのか、はたまた初めて私からキスをしたから驚いたのか悟は固まってしまった。私は自分からキスをした事に、後から恥ずかしくなって、慌てて繋いだ手を離した。

そのまま勢いよく部屋を出て、自分の部屋に戻る。

もう大丈夫。恐怖なんて感じない。