先輩よん ページ4
清水先輩が好きな田中先輩に私の事を見てもらうためには、この方法しか思い浮かばなかった。
でも、嘘の方法で田中先輩に見てもらおうなんて本当に酷いな……私。
清水先輩を利用してるみたいだ……。
後でちゃんと事情説明して謝ろう。
「お……おう？何かよく分かんねぇけど、潔子さんが好きなんだな？」
「は……はい！好きです」
「よし！なら潔子さん連盟に入れてやろう！」
嘘の無い眩しい笑顔を向けられて、少し表情が引きつってしまった。
本気で清水先輩を好きな田中先輩に失礼だったかな……。
「俺は田中龍之介だ！よろしくな！」
「……はい。私は吉川Aです」
「あー、そろそろ部活の時間だからまたな」
もう行っちゃうのかぁ、って少し残念な気持ちを抑えて頑張って下さいと声をかけた。
次やる事は……清水先輩に謝ることだ。
「清水先輩……」
部活が始まっちゃう前に清水先輩見つけなくちゃ……。
小走りで清水先輩の姿を探す。
すると突然曲がり角で人とぶつかった。
「……っごめんなさ」
相手の人の身長が高すぎて、思わず見つめてしまった。
あ、この人同じクラスの……。
「……何」
「ごめん、月島くん」
月島蛍くんだ。
身長高いしあんまり喋らないからちょっと怖かったんだけど、怒らせちゃったかな。
「あぁ……君」
「……？」
「田中さん好きなんでしょ、君」
「はっ……い？」
月島くんの口から田中先輩の名前が出ると思わなかったから、びっくりして間抜けな声が出た。
「うるさいから嫌でも聞こえてくるんだけど」
友達に田中先輩のかっこよさを語ってる時の事だ。
「そんなに声大きかったっけ……私」
「好きな事話してるからでしょ」
「そう……なのかな」
「……まぁ、僕には関係無いけどね」
そう言って私の横を通り抜けようとする月島くん。
「……同じ部活でしょ？田中先輩と」
「そうだけど、何」
部活始まるんだけど、と文句を言う月島くん。
「先輩に私の事何も言わないでね」
好きなんてバレてしまったら、私は田中先輩の隣にいる事が出来なくなってしまう。
「……言うわけないでしょ」
そう呟いた横顔が寂しそうに見えた。
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作者名：エビチャーハン | 作成日時：2018年10月17日 0時
