アイのカタチ (ページ29)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:38,776 hit

天罰ページ29

.

意識が朦朧とする中何とか営業が終わりいつものように誰もいなくなったソファに寝転ぶと、少し向こうからパソコンのキーボードを打つ音が聞こえてくる

『この前はごめんね』

「別に、俺こそ悪かったな」

『大我に何か言われた？』

「秘密」

『そっか。ごめん』

怠い身体を起こして小さなポーチの中から軽い煙草の箱を取り出すと、案の定中身は空っぽでコートを羽織って店を出た

.

エレベーターを待っている間背後のドアが開いて振り向くとほっくんがいて、腕を引っ張られた

「煙草？俺が買ってくるよ」

『ふふ、心配性だな。大丈夫だよすぐ戻ってくる』

無理矢理扉を閉めてエレベーターが動く大きな機械音、正直まだ身体はしんどくてこの浮遊感が更に気持ち悪さを増す

.

外に出るともう一度深呼吸をして肺いっぱいに空気を送り込んだ、外には車が何台も並んでいて週末だからかいつもより人で賑わっていた

少し歩くと車の中で携帯を見ている阿部ちゃんを見つけて近寄ろうとした時、誰かにぶつかって転んでしまって

謝ろうと身体を起こそうとすると腰の辺りに違和感が、転んだ拍子に地面にぶつけたのかなと思い手を当てると、何故か赤く染まるドレスと右手

痛いとか以前に不思議な感覚

何処からか聞こえてくる女の悲鳴、慌てて駆け寄る周りの通行人と驚いた表情の阿部ちゃん

「…っA……！」

途切れて行く意識の中阿部ちゃんの声だけはハッキリと聞こえた

.