アイのカタチ (ページ27)

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受話器越しの声ページ27

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「A、電話なってる」

『ありがと』

濡れた手で画面をスライドすると間違えてスピーカーのボタンを押してしまって、浴室に「メリークリスマス！！」と大きな音が響き渡った

焦って湯船に落としそうになったスマホを耳に当てるとくすくすと笑い声が聞こえてきて、私もつられて笑ってしまった

『メリークリスマス、樹』

「よかったぁ、ちゃんと出てくれた」

『約束したからね。で、どうしたの？』

「いや特に用はねぇ、声聞きたくてさ」

『何それ』

電話越しに聞く樹の声はいつもよりも少しだけ低くて、外にいるのだろうか車の走る音が聞こえてきた

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「なぁ、もしかしてお前今風呂？」

『そうだけどどうかした？』

「まじかよ何かえろ」

『ヘンタイ』

別に見られてる訳でもないのに、お風呂の蓋を首のギリギリのところまで持ってきた

「冗談だって。再来週の金曜日の予定は？」

『今のところ何もないけど』

「ならその日俺のために空けといて」

『うん、わかった』

「んじゃそれだけ、風呂のぼせんなよ」

バイバイを言う前に電話は切られてしまった、相変わらず自由な人だ

電話帳に新しく追加された樹の電話番号

表示名は"樹"でなく"田中さん"にしたのは大我に対する後ろめたさと罪悪感から逃れるためなのか、そんな事私にだってわからない

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