アイのカタチ (ページ20)

今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:38,780 hit

手袋ページ20

.

せっかくの休みだというのに眠りを妨げるかのように頭の上で鳴り響く携帯、画面を見ずに寝起きの枯れた声で電話に出る

『…もしもし』

「ごめん、もしかして起こした？」

『んーん』

電話越しに聞こえてくる大我の声、毎日のように聞く声も寝ぼけて頭が回らないせいか少しだけ鬱陶しく感じた

「着いたら連絡する」

『うん』

重い腰を上げて洗面所に向かうと、鏡越しに見えた寝起きの悲惨な姿に驚いて慌てて冬の凍りそうな水で顔を洗いもう一度鏡を覗き込んだ

水で滴る顔はどこか悲しそうな表情で大袈裟に口角を上げてみたけど目は笑ってなくて

鏡越しの自分に何もかも見透かされてるようで手に付いた水を鏡の向こう目掛けて飛ばしてやった

.

「ね、今日はさ俺が昼飯作りたい」

と少年のように目をキラキラと輝かせながらコーヒーの入ったマグカップを持ってキッチンへやってきて

『大我料理出来ないじゃん』

「俺だって料理くらいできるし」

分厚い上着を羽織って玄関を開けると風がぶわっと吹き寄せてきた、本当この寒さはいつまで経っても慣れない

家を出てまだそんなに時間は経っていないのに指先は冷え切って感覚を失い両手に息を吹きかけて擦った

「手貸して」

握られた手はカイロのように温かくてそのまま大我のポケットの奥までしまうと

『大我の手っていつもあったかいよね』

「俺は心もポカポカだからね」

『何それ、私が心が冷たいみたいに言う』

少し赤くなった鼻でくすりと笑うんだ、今年の冬は手袋要らないかな

.