君と覚悟 ページ24
どく、どくんと心臓が動く度に、血が身体の中を巡る事に
──────己の細胞が1つずつ死んでいくような、止まっていくような不快感を覚える。
ヒーローも警察も、最早お手上げ状態だった。一般市民を助けたい、でもそうすれば彼女が死ぬ。彼女を助けたい、でもそうすれば一般市民諸共みんな死んでしまう。
刻一刻と生命が削られていくのがわかる。もう俺たちに、俺に残された救済方法は一つしかたなかった。
しかし、その方法を言い出すことも出来なければ実行することも決して出来ない俺にとうとう痺れを切らして管轄の警部さんがガタリを立ち上がった。
「…サンイーター、このままじゃ一般市民も俺らもお陀仏だ
悔しいが俺たちも何も出来ない。救える方法が…これしかない。お前も分かってるだろう？」
その場の空気が一瞬で張り詰めるのが分かった。俺の心中を察してか新米ヒーローが声を上げる。
「ちょっと、警部さん。それってサンイーターの奥さんを見放すっていうことですか？」
「…っ仕方ねぇだろ！イレイザーの個性でも消えない。もう、もうそれしか…」
ぐっと、震えるほど拳を強く握る警部さんの言葉に、皆喉を震わせた。もう何も言う者は居なかった。否、言える者は。
俺を気遣ってか、視線を逸らす皆の優しさが反対に胸にしみてしまう。その噛み合わない視線が、事実が紛れもない事実だと。
「俺、行きます」
突然立ち上がった俺に皆がざわつく。ミリオが「環」とつかむ腕に、そっと手を重ねた。
「Aと、話してくるよ」
翼を生やして俺は地面を蹴った。大きく慣れない翼を動かしてAの元へと辿り着く。
近くで見つめるAの表情は苦痛に満ちていた。いつまでも眺めていたかった白くて滑らかだった肌はすっかり黒い紋様に染まっている。
気絶しているのか眠っているのか、目を瞑ったAの姿を見て、涙が自然と溢れた。
妻が、愛おしいAが、目の前でこんなに苦しんでいるのに、俺は君を助けられない。助ける術を知らない。
「A、A…」
「A」
「A、起きて」
何度も何度も名前を呼ぶと、漸くしてからAは呻き声を上げて瞼を開けた。
虚ろな瞳がやっと俺を見つめる。俺はその頬を両手で包み込んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 440人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
alto(プロフ) - 素晴らしい作品でした！上手く表現出来ないのですが、とっても感動しました…！心が暖かくなりました。出てくるキャラがみんないい人過ぎて…すみません、言葉が纏まらないほど興奮してます！これからも応援してます！ (2020年9月12日 22時) (
レス) id: 22bf36de90 (このIDを非表示/違反報告)
星空_kanata_(プロフ) - 初コメです！この小説大好きで既に3回程読み直してます。天喰くんが推しなのですが初見の時は大号泣でした！他の小説も同じ作者さんとは気づいてなかったのですが、読みました！とても面白かったです！時間があれば、また天喰くんの話書いてくれたらな、と思います！ (2020年8月30日 1時) (レス) id: c2e895435f (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃奈瑠璃 - これほどまで感動した小説ありません！いい小説です！もう言葉に言い表せないくらい！ (2020年7月25日 14時) (レス) id: ce4d25fc12 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - シュラスさん» コメント遅くなって大変申し訳ございません！気づきませんでした…！ミリオも大活躍でしたよね…！段々と天喰くんのお陰で強くなれた彼女ちゃんです…！感動して頂けて嬉しいです！ (2020年4月2日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 藍煙(元もも)さん» コメント大変遅くなってごめんなさい…！気づきませんでした…。ありがとうございます！最後まで読んでくださってもう感激です…！本当ですか！？なんだかとっても嬉しいです！執筆頑張ってください！ (2020年4月2日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あろま
| 作成日時：2019年5月7日 17時
