君と運命の決断 ページ22
心臓に氷の矢が刺さる。
動揺して呼吸も出来ない俺の様子を、濁ったAの目で見つめて
「再現したタコの足で締め付けてもいいし、鱘の口先で心臓を一突きしてもいい。
それから──────」
次から次へと俺の個性で彼女の命を絶やす方法を淡々と述べる敵に、手がわなわなと震える。
その度に頭に俺が彼女の命を絶とうとする映像が流れて大量の冷や汗が全身を流れる。
顔面を蒼白にして黙り込んだ俺に、敵は首を傾げた。
「…どうしたサンイーター。やらなければ君は死に至る。否、君だけじゃない。彼女の息を吸ってしまった人々全員がね」
はっ、と周りを見渡すと、人々は既に顔を青くして立っていた。身体の変化に気づかない人もいれば、顔を顰める人もいる。
そんな人々の様子を上から一回り見下ろしてからAの顔を不気味に歪ませる。
「愛しい妻を犠牲にして、この街全体の人々を救うか。
──────それとも、救うべき人々を見放して愛しい妻を助けるか、好きな方を選んでおくれよ」
ははは、と甲高い笑い声と共に腕を広げる敵にプツリと糸が切れた。紐できつく縛っていた大量に重ねた新聞紙の、その張り詰めた紐のような距離。
「お前…、お前だけはッ！！！」
あまりの怒号に地面が震えた。微かな振動に後ろでミリオたちが固唾を飲み込む中、敵はほぅ、と関心ありげに見つめていた。
「サンイーターもそんな顔はするのか。興味深いものが見れた」
全く焦燥を感じさせない声音でそう言うと「精々頑張ってくれよ」と敵はAの中から消えていった。
敵が抜けたAの身体は瞬間にがくりとなって力を失った。表情を伺っても、黒い靄の影になって見えなくなってしまっていた。
ふーっ、ふーっ、と荒くなった息のまま身を乗り出す俺の肩をミリオが掴む。
「環、環！大丈夫だ、初めがあるなら終わりはあるんだ。
なにかしら解決する方法があるはずだ」
ミリオは怒りが篭った、けれども冷静に未来を見据える瞳を見て俺は自分が愚かしく思えた。
「…済まないミリオ。冷静になる」
「うん…、そうだ」
背中に優しく添えられた掌が、やけに熱くて胸にしみた。
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alto(プロフ) - 素晴らしい作品でした！上手く表現出来ないのですが、とっても感動しました…！心が暖かくなりました。出てくるキャラがみんないい人過ぎて…すみません、言葉が纏まらないほど興奮してます！これからも応援してます！ (2020年9月12日 22時) (
レス) id: 22bf36de90 (このIDを非表示/違反報告)
星空_kanata_(プロフ) - 初コメです！この小説大好きで既に3回程読み直してます。天喰くんが推しなのですが初見の時は大号泣でした！他の小説も同じ作者さんとは気づいてなかったのですが、読みました！とても面白かったです！時間があれば、また天喰くんの話書いてくれたらな、と思います！ (2020年8月30日 1時) (レス) id: c2e895435f (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃奈瑠璃 - これほどまで感動した小説ありません！いい小説です！もう言葉に言い表せないくらい！ (2020年7月25日 14時) (レス) id: ce4d25fc12 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - シュラスさん» コメント遅くなって大変申し訳ございません！気づきませんでした…！ミリオも大活躍でしたよね…！段々と天喰くんのお陰で強くなれた彼女ちゃんです…！感動して頂けて嬉しいです！ (2020年4月2日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 藍煙(元もも)さん» コメント大変遅くなってごめんなさい…！気づきませんでした…。ありがとうございます！最後まで読んでくださってもう感激です…！本当ですか！？なんだかとっても嬉しいです！執筆頑張ってください！ (2020年4月2日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2019年5月7日 17時
