君と想い ページ12
その日から変わった。
確実に、私たちの間にあった溝が。
サンイーターこと環さんは、それから私と過ごす日を毎週ちゃんと作ってくれた。
遠慮したけれど、「Aが思い出そうとしてるんだから、俺が協力しなかったら駄目だ」と意地を貼って首を降り続けた。
案外環さんは頑固らしい。
何度目かの週を迎えて、二人の子供達との距離感を掴めてきた。
まだ記憶は思い出せないけれど、でも、この子達との時間は愛おしくて温かい。
「まま」「まま」と呼んで小さな身体で寄ってきてくれる颯と恵のことも、心から愛したいと願う。
そして──────また、環さんとの距離感も、彼のことも、掴めてきた。
偶に凄くビクビクして、臆病で。
なのにちゃんと心の芯はしっかりしていて、颯と恵の前ではちゃんと"ぱぱ"で。
私の前ではどこかオドオドしながらも、でも、支えて守って、愛してくれる。
──────そんな彼に、胸の温かさを感じるようになった。
ある日、帰ってきた彼は身体に包帯を巻いて帰ってきた。
『先に寝てて』というメッセージが送られてきたものの、こんな時間まで帰ってこない彼が心配で、私はずっと起きていたのだ。
眠くて重い頭でなんとか意識を保っていると、ガチャ、と玄関のドアが開く音。
寝ている子供達を起こさないように、螺旋階段を降りていくと、環さんは靴箱に寄りかかっていた。
「環さん…！」
ハッとして駆け寄ると、彼は顔を上げて目を丸くする。
「なんで起きて…」
此方を向く顔は完全に疲労仕切っていて、応急処置はしたのか包帯を足や腕に巻いていた。
ヒーローコスチュームも所々破れている。
そんな姿に、これ以上ないくらい胸が苦しくなった。
「…っ、心配だったから、起きてました…」
目尻が熱くなって、掠れた声を絞り出すと、彼は寄りかかるように抱きしめてきた。
「…っ」
「…ごめん、心配、かけた…」
初めて見る、彼の弱った姿。
心にまだ消えきらない"恐怖心"は残っているけれど、私はもう知っていた。
──────それと同じくらい、彼を大切に想う本能を
その想いをぐっと噛み締める。
──────まだ、まだ不安で口には出せないけれど。
「…中でゆっくり休んでください。無理…しないで下さい」
その背中に恐る恐る腕を回すと、彼は疲れ切った顔を心から嬉しそうにして「…うん、ありがとう」と微笑んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 440人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
alto(プロフ) - 素晴らしい作品でした！上手く表現出来ないのですが、とっても感動しました…！心が暖かくなりました。出てくるキャラがみんないい人過ぎて…すみません、言葉が纏まらないほど興奮してます！これからも応援してます！ (2020年9月12日 22時) (
レス) id: 22bf36de90 (このIDを非表示/違反報告)
星空_kanata_(プロフ) - 初コメです！この小説大好きで既に3回程読み直してます。天喰くんが推しなのですが初見の時は大号泣でした！他の小説も同じ作者さんとは気づいてなかったのですが、読みました！とても面白かったです！時間があれば、また天喰くんの話書いてくれたらな、と思います！ (2020年8月30日 1時) (レス) id: c2e895435f (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃奈瑠璃 - これほどまで感動した小説ありません！いい小説です！もう言葉に言い表せないくらい！ (2020年7月25日 14時) (レス) id: ce4d25fc12 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - シュラスさん» コメント遅くなって大変申し訳ございません！気づきませんでした…！ミリオも大活躍でしたよね…！段々と天喰くんのお陰で強くなれた彼女ちゃんです…！感動して頂けて嬉しいです！ (2020年4月2日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 藍煙(元もも)さん» コメント大変遅くなってごめんなさい…！気づきませんでした…。ありがとうございます！最後まで読んでくださってもう感激です…！本当ですか！？なんだかとっても嬉しいです！執筆頑張ってください！ (2020年4月2日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あろま
| 作成日時：2019年5月7日 17時
