デートのお誘いを受けたよ ページ38
文化祭も終わり、通常授業に戻り始め、皆の浮ついた心が萎んでいく中、私は一際考え込んでいた。
それはこの間の1本の電話だ。
決して悪い内容では無かった。
けれど──────大きな選択が迫られる。
(…どうしよう…)
頭に浮かぶのは天喰くんの気恥しそうな微笑み。
──────言うべきなのか、言わない方がいいのか
淡々と進んでいく授業の中、私はどんよりとした空を見上げた。
積み上げた書籍や参考書に囲まれながら、私はいそいそと調べ物をしていた。
壁のように積まれた書籍から環くんがひょこりと顔を出す。
「A」
図書館だからか、静かな呼び声に私は驚いて「っ！？」とガタガタ音を立ててしまった。
キョロキョロ辺りを見回すも、不幸中の幸い。人は少ししかいない。
ホッと息をついていると、何冊か本を机に降ろして環くんは目の前に座った。
「お疲れ様、頑張ってるね」
そっこりとそんな言葉を掛けてくれる環くんが単純に嬉しくて「…うふふ、ありがとう」なんて返した。
お互いその後は黙々と集中して、気づけば夜になっていた。
「大変だね！」
「急がなくちゃ…！」
門限はまだだが、すっかり夕飯の時間だった。スクールバッグを抱えながら2人してひたすらに走る。
足の遅い私に合わせて歩幅をゆっくりにしてくれるさり気ない優しさに、胸がきゅっと締め付けられる。
走ることに夢中になっていて、気づけばもう寮に着いてしまっていた。
「じゃあ、環くん」
名残惜しく思いながら片手を上げる。そんな私に環くんは「…ちょっと待って」と引き止めた。
「…どうしたの？」
手を下げて、じっと彼を見つめる。すると口をモゴモゴさせてから真っ直ぐにこちらを見た。
「…クリスマス、デートしませんか」
「え──────」
真逆、真逆の。
思いもよらない幸福なお誘いに胸がとくとくと鳴る。
そんな私に環くんは照れくさそうに微笑みを向けた。
「…いいかな？」
返事の代わりに、環くんに思いっきり抱きつく。よろけながらも逞しい腕で私を支えると、抱き締め返してくれた。
「喜んで、環くん…！」
久しぶりの環くんの体温、匂いに、心が満たされていくのがわかる。
(──────クリスマスに、言わなくちゃ)
大事な事。言わなくちゃいけないこと。
でも、今はまだ、この幸せに浸っていたい──────
そんな願いを込めて、私はそっと目を閉じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 346人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
豆腐ちゃん - 環くん…………最高すぎだろ…… さては、主さん天才だな！？神なんだな！？、いや本当にこの小説の人たちには同担拒否が仕事しないww (2023年3月12日 23時) (
レス) @page19 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 鈴蘭さん» コメント気づかなくてごめんなさい…！コメントありがとうございます！2回目の閲覧なのですね…、嬉しいです！環くん出てきましたね…！私も大興奮でした！これからも頑張ります！ (2019年12月30日 16時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - 数ヶ月ぶりにまた見に来ました！相変わらず素敵な作品ですね！いよいよ環くんアニメで出てきましたね！これからも頑張ってください！ (2019年12月1日 11時) (レス) id: c40cd9804d (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 雫さん» コメントに気づくのが遅くなってごめんなさい…！コメントありがとうございます！素敵な作品…、更に好きとまで言って頂けて至福の極みです…！うわああ、天喰くんを更に好きになったというその言葉が一番嬉しいです…！これからも色々な作品で頑張ります！ (2019年8月15日 9時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - かなさん» とっっっても素敵な作品でした！！あろまさんの作品めっっっちゃ好きです！！！更に天喰くん大好きになりました！これからも応援してます！頑張って下さい！ (2019年8月2日 20時) (レス) id: b93c2cbed7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あろま
| 作成日時：2019年4月14日 23時
