環と魔法 ページ10
────その瞬間、胸が締め付けられた
悲しみとか、怒りとか負の感情じゃなくて
きゅって、息が苦しくなった
「天喰くんが、私を…？」
知らなかった────なのに、ずっと前から知っていた気がする
彼の瞳を真っ直ぐに見つめると、そんな気がした
「…そっ、か…、ありがとう」
でもごめんなさい、と告げると、天喰くんは酷く苦しそうな表情を浮かべた
────やだ、そんなに苦しそうな顔しないで
なんだか見ていられなくて、私は俯いた
「…じゃ、帰るで、田畑ちゃん」
"帰る"
────何処に？
ふと見あげれば、大きな太志朗さんの顔があった
────あぁ、何言ってるの、私
大好きな彼と一緒に、大好きな彼との家に、帰るんじゃない
絡めた太志朗さんの腕は温かくて心地よかったのに────心の何処かで、苦い顔の天喰くんがいた
────これは好機なのか、はたまた厄災なのか
「太志朗、美味しい？」
こてんと首を傾げる田畑ちゃんは本物なのか────否、本物だ
今俺は田畑ちゃんが作ってくれたご飯を食べるというとんでもなく夢に見ていた状況を体験していた
ホカホカの白米に、鳥の唐揚げ、サラダにお味噌汁と、シンプルだがバランスの整った食事
正直量が少なすぎるが、もう俺は心も腹も満腹だった
「美味い…、美味いわ」
涙ぐみながら箸を進めると、田畑ちゃんももぐもぐしながら笑った
「ふふ、太志朗さんって私の作ったご飯、いつも美味しいって言ってくれるもんね」
そこでふと箸を止める────田畑ちゃんが言っているのは、環のことだ
(田畑ちゃん…ちゃう、それは俺やない)
そう言いたくても、この叶うはずのなかった夢が叶っているのだ
この幸せを、自ら手放したくない────田畑ちゃんを、手放したくないなんて思ってしまう
(環が辛い思いしとんのに…俺はなんちゅうこと考えとんねん)
自分の諦めの悪さと汚さに内心自嘲していると、田畑ちゃんが顔を覗き込んできた
「…太志朗さん、どうしたの？」
元気出して、と元気づける田畑ちゃん────そんな田畑ちゃんが、俺は好きで堪らない
(…好きやで、田畑ちゃん)
この魔法が解けるまで、解けるまででいいから
────偽りでいいから、傍にいて欲しい
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あろま(プロフ) - 明華莉さん» うわわ、ありがとうございます…！そう言って頂けて嬉しいです…！天喰くんの小説はこれからも書いていきますので、ご覧くだされば幸いです！最後まで更新頑張ります！ (2019年5月4日 7時) (
レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
明華莉(プロフ) - 全然大丈夫です！もうこの作品が読めなくなると思うと悲しいです。更新頑張ってください！ (2019年5月3日 23時) (レス) id: 460d75f05a (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 明華莉さん» リクエストの件なのですが、実は私最後にシリアスを書こうかなと思っていまして…、内容は異なるのですが、明華莉様のリクエストの様なシリアス物語になると思います。少し書くのが難しそうなので、そちらでもよろしいでしょうか？ (2019年5月3日 21時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 明華莉さん» コメントありがとうございます！勿体ないほどの褒め言葉まで頂き感激です…！天喰くんが好きなのですね！実はこのシリーズをもう終わりにしようと考えていまして…、ごめんなさい。でもそう言って頂けて嬉しいです！ (2019年5月3日 21時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
明華莉(プロフ) - あと、リクエストいいでしょうか？時間軸は、婚約後で、夢主ちゃんが交通事故に遭い記憶が前世になるというストーリーを書いてもらいたいのですが…ご検討おねがいします。 (2019年5月3日 15時) (レス) id: 460d75f05a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2019年4月1日 22時
