夢の宣言 ページ9
「どこのポジションが好きですか？」
授業終わり、初めて生徒が質問しに来て感動していた心が少しだけ折られる。目の前の背の高い短髪の少女────────高田さんは、緊張気味にそう問うた。
彼女は確かバレーのスポーツ推薦でこの学校にやって来たのだ。一際背が高いからよく覚えていた。
「…うんとね、セッター、かな」
この間見に行ったMSBYの試合での、侑の目も眩むようなセットアップを思い出しながら、私はそう答えた。
すると高田さんは「！」と目を丸くして一瞬固まってしまった。思わず首を傾げると、それまで緊張で強ばっていた顔ではにかんで。
「私もセッター好きです。セッターなんです、私」
窓からさす光を受けて輝く彼女の瞳は、どこか既視感があって────────あぁそうだ。これはバレーの話をしているときの侑の顔と一緒だ。
「格好いいよね、セッター。スパイカーの手のひらピンポイトに的確なトスを回すところとか、あとここで！？ってなるツーアタック。本当に惚れ惚れするよね」
「はい、分かります…！」
侑の事を思い出して興奮してしまうと、それに釣られて彼女も興奮気味にそう言った。素直に生徒とバレーの話が出来ることが嬉しくて、つい頬が緩んでしまう。そんな私に、高田さんは黙り込んでいたかと思うと姿勢を正して真っ直ぐに向き合った。
「あの、私、先生の旦那さんのファンなんです」
その途端、熱していた気持ちにセーブが掛かる。徐々にサァアッと顔から血の気が引いて、私は彼女を見上げた。
「え…」
「ごめんなさい。分かっちゃいました。最初は疑ってたんですけど、先生なら、彼もベタ惚れなんだろうなぁって思いました」
彼女の表情に悪巧みを思案するような邪心は殆どなく────────、ただ、淡々と小さな声で言葉を続ける。
「でも、サインくださいなんて甘いこと言いません。いつかプロになって、ちゃんとお話して、そしたら直々にサイン貰います」
そう宣言する彼女の言葉は、強く重みがあって。その目は私を見つめているのに、遠く先────────オレンジコートの、またその先を見つめていた。
その夢に向かう眼差しに呆気に取られていると、彼女は今度私を真っ直ぐ見つめた。
「勿論誰にも言いません。私、先生のこと応援してます。だから…また、バレーのお話、してもいいですか？」
ちょっと不安げな声音と年相応の表情に、私が「うん、勿論」と微笑むと、彼女は心から嬉しそうな顔で笑った。
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静狐 - 最初から最後まで読ませていただきました！！この作品すっごく好きです！！文化祭のところとかもうにやにやしながら読んでました！台本変えちゃう侑がかっこよかったです！ (2020年7月23日 3時) (
レス) id: 0292f2bd22 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 望叶mokaさん» こちらこそリクエストありがとうございました！消化が遅くなってしまってすみませんでした…。でも喜んで頂けて本当に嬉しいです！素敵なネタで書くのが楽しかったです！ (2020年5月8日 23時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
望叶moka(プロフ) - リクエスト答えて下さりありがとうございます！もう最高すぎです………(≧∀≦) (2020年5月6日 0時) (レス) id: b04e5afd09 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます！うわぁあ、夢中になって読んでくださって嬉しいです！私もこんな風にアプローチされたいなーと思いながら書いてました（笑）コメントとっても嬉しいです！ (2020年4月19日 20時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - コメント失礼します。今日一日で最後まで読み切れてしまうほど素敵な小説でした、、、！侑くんと治くんのアプローチにずっと胸がギュンギュンしました〜(；＿；)！ 最高です！ (2020年4月17日 18時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2020年3月28日 21時
