その素顔、俺に見せろ【宮侑】

愛情表現 ページ8

「で、どやったん。初めてのクラス担任は」


上機嫌もえぇとこで、頬が蕩け落ちそうなくらいか頬を緩めてデザートを食べとったAに聞けば、一瞬でその顔は眉を下げて、一気に疲弊した顔んなる。



「や…、本当に疲れたよ…。ていうか、最初は緊張しすぎて表情筋動かなくて。男子生徒に『能面みたい』って言われてた」

「おー、懐かし。能面女」

「でもね、それから自己紹介のときに彼氏いますか？って聞かれて。そしたら思わずその…、頬が緩みそうになっちゃって」

「…おん」

「いませんって言ったら、旦那さんはいますか？って。だからいますって答えたら、なんか『あー、私、侑のお嫁さんなんだなぁ』って改めて嬉しくなっちゃった」

「……」

「そしたらなんかよくわかんないんだけど、皆打ち解けてくれて。だからヒヤヒヤしたのは最初だけ。良かったよ」



心から安堵した表情を向けるAの言葉に、心臓が煩く動いて堪らん。此奴、やっぱ苦手や。照れさせたろなんて下心は一切なく、本気でそう思って俺にそないこと言うてくる。

なんやおもろいことあったならからかったろ、と思てた悪戯心が全部綺麗サッパリ吹っ飛んで。俺ん中に残ったのは照れ臭さだけやった。


「お前は…なんでそない事なんでもないように言うんや」
「え…、だって本当だもん。苗字とか書類に書く度に嬉しくなるし、自己紹介するときもなんかムズムズするし」


またAの無意識爆弾発言攻撃が飛んでくる。ホンマにあかん。やって、一瞬でこないに俺の平常心ぐらぐら揺らしてきよる。恥ずかしなると同時に「此奴のことホンマに好きや」って、再確認してまう。


「なぁ、ちゅーしたらあかん？ごっつしたいんやけど。あかん？」
「あかんに決まってるでしょ！もう、侑ってば！」


小声で説教するも、Aのそんな反応はすっかりレストラン内には聞こえとるようで。「熱いわねぇ」「私も若い頃は…」なんてクスクス笑うおばちゃんの声が聞こえて、二人揃って顔が熱なった。

「…侑のせい」
「Aが可愛すぎるのが悪いねん」

二人ムッとした顔を見合わせて、それからなんやおかしゅうなって、笑いが零れた。

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