誰かさんそっくり。 ページ16
ドタドタと家の中を駆け回る足音が近づいてくる。それに伴って扉を勢い良く開けて飛び出てきたのは4歳の翔。
「こらー！かける！」
それに続いて全身土埃だらけの格好のままリビングに入ってきたのは6歳になった元気娘の泉だった。手には薄汚れたバレーボールを手にしている。
「ママ、助けて！」
まだ幼い柔らかな手がエプロンを掴む姿に、正直申し訳ないけど可愛いと思う。「よしよし」とサラサラの髪の毛を撫でてから「泉」と呼びかける。
「翔嫌がってるでしょう。やめなさい」
「えー、だって、かけるがトスの途中で逃げるんやもん！かけるがトス上げてくれなきゃ私スパイク打てないやん！」
本当にどこかの誰かさんに似たようで、泉はバレーボールが大好きだ。小学校から帰ってきてから6時の今の今まで庭で練習するくらいなのだから。
「いやや！もうおれ疲れた！」
「かけるのケチ！私もう一回スパイク打ちたい！」
やだー！と声を上げる泉はこうなったら止められない。もう一回、と言うのだから、素直な泉の事だ。あと一回で満足してくれる。
「仕方ないなぁ、じゃあママがトス上げてあげる」
料理の手を止めてタオルで手を拭くと「いやや。ママ、バレー下手くそやもん」とジト目で見られてしまった。こういう毒舌なところも本当に誰かさんそっくりだ。
「ただいまー」
玄関の扉が開くと同時に、その誰かさんの声が聞こえてくる。泉はパァっと顔を輝かせると、ジャージ姿で帰ってきたパパ────────侑に抱きついた。
「おかえりパパ！ねぇねぇ、トス！トス一回上げて！」
「お、ただいま。えぇよ！天才セッター侑様が上げたるわ！」
娘の可愛いお願いを断るはずもなく、普段なら「腹すいた！」と食卓に駆けつけるはずが、エナメルバッグを放り出して外へ駆けていく。その様子をあらあらと見つめていると、翔がぎゅっとまたエプロンの裾を握った。
「ママ、また寝る前に面白いお話してくれる？」
大きな瞳で此方を見上げる翔は、やっぱり侑にそっくりだ。宮家の実家でお義母さんに見せてもらった侑の子供の頃の写真を思い出しながら「うん、勿論」と笑うと、翔は「ありがとう！」と元気よく笑う。
「うん、今日は何にしようか。考えておくね」
「おれ、戦う人のお話がえぇ！王様とか！」
「そうだね。格好いいもんね」
恐らく、侑が来たからには一回じゃ終わらないだろう────────そう思いながら、翔の頭をよしよしと撫でるのであった。
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静狐 - 最初から最後まで読ませていただきました！！この作品すっごく好きです！！文化祭のところとかもうにやにやしながら読んでました！台本変えちゃう侑がかっこよかったです！ (2020年7月23日 3時) (
レス) id: 0292f2bd22 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 望叶mokaさん» こちらこそリクエストありがとうございました！消化が遅くなってしまってすみませんでした…。でも喜んで頂けて本当に嬉しいです！素敵なネタで書くのが楽しかったです！ (2020年5月8日 23時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
望叶moka(プロフ) - リクエスト答えて下さりありがとうございます！もう最高すぎです………(≧∀≦) (2020年5月6日 0時) (レス) id: b04e5afd09 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます！うわぁあ、夢中になって読んでくださって嬉しいです！私もこんな風にアプローチされたいなーと思いながら書いてました（笑）コメントとっても嬉しいです！ (2020年4月19日 20時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - コメント失礼します。今日一日で最後まで読み切れてしまうほど素敵な小説でした、、、！侑くんと治くんのアプローチにずっと胸がギュンギュンしました〜(；＿；)！ 最高です！ (2020年4月17日 18時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2020年3月28日 21時
