その素顔、俺に見せて【宮治】

誓い ページ16

右端の列にはお母さん、兄。親戚の後ろには伊藤ちゃん、本田ちゃん、それに白井さんも座っている。

皆の視線が集まるのを感じながら、治の目の前に辿り着いた。

そっ、と父親の腕から手を離すと、父は微笑みながら強く頷いて自らの席に付いた。そのままゆっくりと、治の手を取って、一歩、一歩進んで。


────────今、壇上のステンドグラスの下へ。


音楽が鳴り止み、静寂に包まれる中で、神父さんが穏やかな微笑みを浮かべ、治の方を向いた。


「新郎、宮治。貴方は健やかなる時も、病める時も、妻の宮Aを愛することを誓いますか？」

「はい、誓います」


いつもよりほんの少し強ばった、けれど真剣味を帯びた声音に、また目尻が熱くなってしまう。視線を少し動かして見れば、治は柔らかな眼差しで私を見つめていた。

治の誓いの言葉に頷いた神父さんが、今度は私の方を向く。


「新婦、宮A。貴女は健やかなる時も、病める時も、夫の宮治を愛することを誓いますか？」

「…はい、誓います」


健やかなる時も、病める時も。それは、ずっと昔から治と半分こすると約束してきた。どんなときも、いつでも、最後まで。


────────あぁ、本当に、この人と結ばれる。


そんな想いに、胸が焼けそうな程苦しくなる。必死にヴェールの下で涙を堪えていると、私の誓いの言葉に頷いた神父さんが「では、指輪の交換を」と述べる。

お互いに向き合って、背の高い治を見上げると、形のいい唇が緩やかな弧を描いて。そっと、手にした指輪を、私の指にはめていく。薬指を彩る指輪は、婚約指輪よりずっとシンプルなシルバーリングなのに、ステンドグラスの光を受けて色とりどりに姿を変える。

苦しい胸で必死に呼吸をしながら、震える手で治の指に、ゆっくり、ゆっくりと指輪を通す。いつも私の包み込む手。沢山の人を笑顔にするおにぎりを握る、優しい手。



「────────では、誓いの口付けを」



その言葉にはっと声を上げると、治は目に涙を溜めて静かに微笑んでいた。ゆっくりと大好きな手が、私のヴェールに手をかける。

「…怖くあらへんよ」

静かな囁きとその台詞、全てが……まるで、まるで能面を剥がすかのようで。


(この人なら。いや、この人がいい)


私はそっと、涙を流しながらめいいっぱい微笑んで、開けた視界で治を見つめる。

ゆっくりと、目を瞑った治が背を縮めて────────。






今、唇と唇が重なって、合わさって、ひとつになった。

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