手のひら ページ1
私の手を掴んだのは、治くんだった。サラサラの銀色の髪の毛は崩れていて、少し息を切らした彼が、私を見つめている。
その顔を見た途端、目が合った途端から「息をしていいよ」と言われたように自由になれる。身体から力が無くなったように、軽く楽になるの。
「治くん…」
「…また、泣いとる」
少し安心したように、くしゃっと笑って治くんは「泣かんで」と涙を拭った。大きな手のひら。いつも優しく触れてくれるその手のひらに、あぁ、また、涙が。
本格的に泣いてしまいそうになって俯くと、治くんの手のひらが私の手のひらを握った。
「取り敢えず、行こか」と優しく、立ち止まっていた私を連れ出す治くん。一瞬、ブレザーの背中にあるはずの無い外套が見えた気がした。
「どこに行くの…？」
「俺の秘密の場所」
ふふん、と子供みたいな笑顔を見ると、自然と頬が緩む。「手、ちっさいなぁ」って笑う治くんのこと、やっぱり、私。
手を引かれて人混みを分けながら連れられたのは、屋上へ繋がる階段の踊り場かだった。立ち入り禁止のテープを乗り越えたとき、なんだか悪いことをしてるみたいで、ほんの少し悪戯心が擽られて、心が踊った。
治くんと手を握っていたら、さっきまでぐちゃぐちゃだった心が驚くほど落ち着いて。もう正常に戻った心音はとくとくと穏やかな波を打っている。
私を階段に座らせると、治くんは「なに食べたい？」としゃがみこんで顔を覗き込んできた。その台詞と、大人しそうな顔に反してヤンキー座りをしてるから笑っちゃう。
「ぷ、ふふ」
「な、なに笑てん！」
「ヤンキー座り面白いなって」
そう言うと治くんは目をぱちくりさせてから少し恥ずかしそうに座り直した。今度は正座。
「一緒に回る言うたやろ。でも、Aちゃんはえぇよ。ここで待っとって」
「ごめん…」
「えぇねん。ここ静かで落ち着くやろ。ここで一緒に色々食べよ」
な、と手のひらが頭に置かれる。人に触れられるのって、こんなに温かくて幸せな気持ちになるんだっけ。そんな事をぼんやり考えながら、階段を掛けていく治くんの背中を眺めた。
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アオ(プロフ) - お久しぶりです。あの、「二つの祝福」で侑くんの所属チームが「プラックジャッカル」となっていますが、「ブラックジャッカル」ですよ (2020年5月17日 16時) (
レス) id: eee0ca23b5 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - さむつむさん» コメントありがとうございます！そんなに丁寧にお褒め頂いて光栄です…！幸せな気持ちになって頂けてなによりです！治の優しさや温かさを精一杯詰め込みました！侑編も現在力を入れて書いています！治とはまた違った未来になってますので、どうぞご覧くださいませ！ (2020年4月5日 23時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
さむつむ - すごくおもしろくて、とても感動しました 選んでいる言葉ひとつひとつがとっても綺麗で、私も幸せな気分になりました こんな風に恋愛したいです…！ 侑編も楽しみにしてます 治編完結おつかれさまでした (2020年4月5日 12時) (レス) id: 64968ef88b (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 奈々さん» コメントありがとうございます！温かい感想とっても嬉しいです…！私こそ涙出ます！リクエストもありがとうございます！どちらも素敵なネタですね…！精一杯書かせていただきます！ (2020年3月28日 21時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - れいさん» コメントありがとうございます！素敵な感想とっても嬉しいです…！ご愛読本当に感謝です！侑オチお待たせしました！是非ご覧くださいませ！ (2020年3月28日 21時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2020年3月23日 23時
